【保存版】野球の投げ方マニュアル!正しい投球フォームを習得するために必要なこと(小学生・中学生、草野球選手向け)
野球でキレのあるいいボールを投げつつ肩や肘にかかる負担をなるべく低くするには投球フォームがとても大切です。
やみくもに投げ込みをしたとしても、きちんとした投球フォームについての知識がなければパフォーマンスアップにつながりません。
まずは、野球の正しい投げ方がどういったものかを理解し、その上で技術を習得する必要があります。
今回、正しい野球の投げ方について投球フォームの各フェーズごとに解説しています。フォームに関する理論だけでなく、オススメの基本トレーニングやストレッチ法も紹介しています。
野球では正しい投げ方を身につけることがケガ予防とパフォーマンスアップの両方で欠かせません。
小学生など学年が低いうちに正しい投げ方をきちんと身に付けておかないと、学年が上がるにつれて悪いフォームがくせになってしまい、フォーム矯正するのはかなり難しくなってしまいます。
また、草野球選手では、学生時代よりも体がかなり固くなってしまい、投げ方が崩れてしまっている方がとても多いです。
草野球をしている社会人の方は柔軟性を高めるストレッチを徹底的に行い、投球フォームを整えていく必要があります。
今回は小学生〜中学生のジュニア選手と草野球選手向けに投球フォームの各フェーズで知っておくべき正しい投げ方とオススメトレーニング&ストレッチ法を紹介していきます。
芹田祐(セリタタスク)
理学療法士として整形外科病院・整形外科クリニックなどに10年ほど勤務。野球現場では小学生からプロ野球まで幅広い年代の選手に対して述べ1000名以上のリハビリテーション・トレーニング指導経験あり。
保有資格
理学療法士/認定理学療法士/JARTA認定トレーナー/国際認定シュロスセラピスト/修士(医科学)
この記事の目次
野球でボールを投げるときの投球フェーズ
まず、投球フォームのフェーズについて簡単に紹介します。
構えてから足を高く上げるところまでをワインドアップといいます。
次に、足を1番高く上げたところからその足をキャッチャー方向に踏み出して地面に着地するまでが前期コッキングになります。
踏み出し足が着地してからは投げる方向に向かって体を回す回転運動になりますが、投げる腕がMaxまでしなるまでが後期コッキングです。
そして、腕がMaxまでしなってからボールを離す瞬間までが加速期(アクセレレーション)で、その後が減速期→フォロースルーへと移行していきます。
野球の投げ方で知っておきたい重要ポイント
では、これから投球の各フェーズで投げ方の基本と押さえておくべきポイントについて紹介していきます。
ワインドアップのポイント
まず、ワインドアップについてです。
ピッチャーはランナーがいなければ、ゆったりとした間合いで足を上げることができます。
このとき、左足を高く上げることでより多くの位置エネルギーを得ることができ、その後の体重移動で運動エネルギーに変換することでより大きな力をボールに伝えることが可能になります。
ワインドアップポジションは、セットポジションよりも時間が長く、そして大きな力を加えることができるため、軸脚による投球方向への力積を大きくすることによって、身体重心の運動量を獲得している
引用:ワインドアップポジションとセットポジションからのストレートによる投球のバイオメカニクス的比較: 高校野球投手における投球速度および投球動作中の下肢と体幹に着目して|体育学研究
しかし、ただ足を高くあげればいいというわけではなく、軸足で片足立ちになったときにバランスが整っていることが重要です。
無理やり足を上げようとすると、バランスが崩れてしまい、投球フォームのリズムが悪くなってしまいます。
効率よくスムーズに足を高く上げるためのポイントは
「骨盤コントロール」です。
足を高く上げようとしたときにみなさんの意識が向くのは太もも(①)だと思います。
しかし、足を高く上げるためには太ももの動きだけではなく、骨盤を後ろに倒す(骨盤後傾②)も必要になります。
骨盤の動きがないまま、太ももだけで足を上げていくと、途中で付け根がつまってしまい、強引に足を引き上げる形になってしまいます。
そのような上げ方ではバランスが悪く、うまくボールを投げることはできません。
バランスよく左足を高く上げるために骨盤のコントロールが重要な役割をはたしているのです。
これ以外にもワインドアップの重要なコツがあるのですが、その点は下の記事で解説しているので、そちらを参考にしてください。
【目からウロコ】ピッチャーの足の上げ方の秘訣!左足を高く上げるために重要な3つのコツ/
踏み出し足が着地したときのポイント
野球の投げ方をチェックするときには、まず踏み出し足が地面に着地した瞬間を見ることをオススメします。
この瞬間は体重移動が終わってリリースに向けて回転運動に切り替わります。
プロ野球のピッチャーなどハイパフォーマンスを発揮できている選手は、この体重移動→回転運動の切り替えがものすごいスムーズでパワーロスすることがありません。
逆にうまくボールを投げられていない選手はこの切り替えをうまくできず、リリースでボールに伝える力が半減してしまうことがあります。
そのため、正しい投げ方ができているかチェックするときは、踏み出し足が地面に着地した瞬間を見て体重移動から回転運動への切り替えがきちんとできる形になっているかをみて判断するようにしましょう。
- 野球の投げ方では、踏み出し足が地面に着地した瞬間に体重移動から回転運動へと動きが切り替わる
- この瞬間の形がよくないと体重移動→回転運動の切り替えをスムーズに行えず、正しい投げ方で投球できない
- 投げ方をチェックするときは、まず踏み出し足が着地した瞬間を見る
トップで肘が下がっていないか
踏み出し足が地面に着地した瞬間のチェックポイント1つ目は肘の高さです。
肘の位置が低いと、下半身→上半身の回転に腕が連動しにくく、全身を使ったダイナミックなリリースができなくなります。
また、肘が下がった投げ方を続けていると肘のケガにつながるリスクが高くなるといわれています。
投球動作に関する報告は少なく、唯一、アームコッキング相でのいわゆる肘下がりが野球肘(内側)の危険因子として挙げた。
引用(一部改):投球肘障害予防に対するシステマティックレビュー|日本アスレティックトレーニング学会誌第3巻第1号
特に、少年野球ではトップで肘が下がってしまう選手が多いのでぜひチェックしてみてください。
また、トップでは肘が上がってきていても、リリースポイントで肘が下がってしまい、パワーロスしてしまっている選手もいます。
野球ではリリースの瞬間に力を最大にできるかが勝負なので、トップでの肘の位置がよかったとしても、リリースポイントで肘が下がってしまうとパフォーマンス低下につながります。
リリースポイントで肘が下がっているかチェックする方法については下の記事でまとめていますので、そちらを参考にしてください。
この記事では肘が下がっているかチェックする方法だけでなく、肘下がりの原因についても解説しています。
肘下がりの原因は
- 肩の筋肉が固い
- 股関節の使い方が悪い
- インナーマッスルの力不足
など様々ですが、少年野球では柔軟性低下などよりもテイクバック(腕の上げ方)に問題があるケースが多いです。
例えば、テイクバックで腕が背中側に大きく入りすぎてしまうと腕が上がりきらずに肘下がりになりやすくなってしまいます。
そんな選手にオススメしたいテイクバックの修正ドリルは以前の記事で動画つきで紹介していますので、もしよければそちらも参考にしてください。
テイクバックトレーニングの一例
小学生のうちに必ずできるようになっておきたいトレーニングドリルを選んで載せてあります。
投球で【テイクバック】がうまくいかない少年野球選手必見!小学生でも簡単にできる修正ドリル7選
インステップになっていないか
次は踏み出し足の着地位置についてです。
踏み出し足の着地は横からだとわからないので、キャッチャー方向からチェックするようにしましょう。
プロ野球選手ではインステップで投球する選手もいますが、基本的には野球では踏み出し足をまっすぐ出して投げるのが好ましいです。
インステップの選手に対して地面にまっすぐのラインを引き、それを目標にしてまっすぐ投げるように指導する方がいると思いますが、なかなかうまくいかないことが多いのではないでしょうか?
むしろ、選手が足をまっすぐ出そうと意識しすぎて投げ方がよけいにおかしくなることもあると思います。
意外かもしれませんが
インステップになってしまうのは踏み出し足ではなく、骨盤・軸足の股関節や重心のコントロールに問題があることが多いです。
例えば、上図のように沈み込みのときに股関節をうまく使えず、重心がつま先よりになると膝が前に引き出されてインステップになりやすくなってしまいます。
この場合は沈み込みでの重心位置の調整などを行う必要があります。
このようにインステップを修正するためにはやみくもに踏み出し足をまっすぐにするのではなく、根本的な体の使い方を修正する動作トレーニングドリルを行うべきです。
インステップについての詳しい解説と改善トレーニングは下の記事で説明しています。この記事を読んで正しい投げ方を身につけるようにしましょう。
うまく【割れない】選手は胸郭ストレッチしてみましょう
次は割れです。
踏み出し足が着地した瞬間には下半身と上半身の間に捻転差が生まれます。
この動きは球速アップに欠かすことができない野球の投げ方の中でとても重要な動きになります。
投球動作中のボール加速局面における体幹の回転動作や捻転動作は投球速度を大きくするうえで重要
引用:大学野球投手における体幹の伸張-短縮サイクル運動および動作が投球速度に与える影響|体育学研究
ひねりというと腰の回転を意識するかたが多いと思いますが、人間の構造上、腰には体をひねる可動域はほとんどありません。
背骨をひねる可動域をみると、腰の上にある胸椎(肩甲骨くらいの高さ)という背骨はだいたい35°体をひねることができます。
それに対して腰はその角度が5°しかありません。
胸椎と腰椎で可動域に7倍も差があるのです。
そのため、野球でスムーズな捻転差を作れるかは胸椎の柔軟性がカギを握っています。
【割れ】を作るために必要なのは腰の回転ではありません!ケガ予防に大切な考え方
草野球の選手では胸椎(胸郭)周りがガチガチに固く、割れを作れなくなっている選手が多いです。
胸椎が固いままでは間違いなく正しい投げ方を習得することはできません。
そのような選手は胸椎の可動域を高めるトレーニングをどんどんやる必要があります。
胸椎トレーニングの1例
野球選手に必須となる胸椎トレーニングは下の記事で紹介しています。
リリース直前の腕のしなりは球速に直結する
球速を上げるためにはリリース直前に腕をしならせた投げ方を習得する必要です。
ただ、腕のしなりを作るときには注意が必要です。
このしなりの深さは腕だけをひねってできるものではなく、
- 腕
- 肩甲骨
- 胸椎(胸郭)
この3つの部位をすべて柔軟かつ巧みに動かせないといけません。
腕のしなり(MER)の増加を肩甲骨後傾や胸椎伸展で構成することができれば、いわゆる「胸を張った」投球動作になり、パフォーマンスの向上にもつながる。
引用:投球動作の肩最大外旋角度に対する肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節および胸椎の貢献度|体力科学
腕だけを使って強引にしなりを作ると肩や肘に大きな負担がかかってしまいます。
下の記事では腕だけでなく、肩甲骨や胸郭を含めた全身的な可動域を高めるトレーニングを紹介しています。
しなりトレーニングの一例
球速をアップさせたい選手にオススメのトレーニングなのでぜひ取り入れてみてください。
【正しい投球フォーム】を自然に身につけるための必須基礎トレーニングドリル7選!誰でも簡単にできる【ストレッチ&動きの感覚ドリル】
野球センスがないと感じる少年野向けのトレーニング
さきほどスローイング動作ではしなりの動きが重要でるあることを説明しました。
草野球選手では体が固くてしなりをうまく出せていないことが多いです。
その一方で、小学生の場合は柔軟性が原因というよりは全身をしならせる感覚をつかめていない子がとても多いです。
特に、いわゆる「野球センス」がないといわれる選手ではこの傾向が顕著です。
しなりの感覚がない子の動作は、全身をバネのように使えないので体の動き自体が固く、ぎこちない動きになってしまっています。
- 野球未経験の親から見て明らかに野球センスを感じない
- 同学年の他の子からどんどん遅れをとっている
- このまま練習していても開花する感じがしない
もし、お子さんが該当するのであれば、素振りや投球練習をやみくもにやっていてもうまくならないでしょう。
それは、野球がうまくなるための土台がない状態で技術練習をしているからです。
このような選手が今やるべきはしなりやバネの感覚などを体に覚えこませる、つまりうまくなるためのベース作りです。
少年野球の選手がしなりやバネの動きを自然に習得するのに最適なのが「バネトレ」というトレーニング法です。
バネトレはどんなに飲み込みが悪く、野球センスがない子でも継続的に練習する事でしなりの感覚を覚えて野球の動作も改善されてスムーズにボールを投げる事ができるようになります。
ぼく自身もトレーニング指導している選手に実践して効果を体感しています。
このトレーニングは即効性はありませんが、継続的にきちんと取り組めば選手の動きに変化が出てきます。
バネトレの詳しい内容については下の記事で解説していますので、興味がある方はご覧ください。
リリースポイントを前にするために知っておきたいこと
最後はリリースポイントについてです。
リリースポイントを前にできると、その分バッターに近い位置でボールを離すことができるので、バッターからは球威を感じるボールを投げ込むことができます。
野球ではなるべくリリースポイントを前にしてボールを投げられるようになりましょう。
リリースポイントをできるだけ前にするために重要なのが体の入れ替えです。
できるだけ腕を体から遠くまで伸ばすためには左半身と右半身を入れ替えてボールをリリースする必要があります。
体の入れ替えをスムーズにするためにはいくつかポイントがあるのですが、その1つが踏み出し足のお尻周りの柔軟性です。
軸足のお尻周りにある筋肉が固いとターンの途中でおしり周りがつっぱってしまい、回転にストップをかけてしまいます。
体の入れ替えを高速で行ってリリースポイントを前にするためのコツについては下の記事でまとめています。
ぜひ参考にしてみてください。
投球フォームの改善につながる【股関節】ストレッチ&トレーニング4種
野球で正しい投げ方を身につけるには柔軟性と体の使い方の調整が大切
野球で正しい投げ方をするために大切なポイントについて紹介してきました。
投げ方がおかしくなっているのは、腕そのものの使い方ではなく、骨盤・股関節のコントロールや体が固くなっているなどほかの部分に原因があることが多いです。
基本的に「このトレーニングすれば必ず投げ方がよくなる!」ということはありません。
まずは自分やお子さんの投球フォームをチェックしてどこに課題があるかを理解した上でその原因に対するトレーニングやフォーム修正をするようにしましょう。
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