【割れ】を作るために必要なのは腰の回転ではありません!ケガ予防に大切な考え方

「腰をもっと回せ」

「腰のひねりが足りない」

「腰の回転を意識しよう」

ピッチャーに限らずゴルフスイングやバレーのアタック動作などスポーツ指導の場面でよく聞かれる言葉だと思います。


ピッチャーの場合、ステップ足が着地した瞬間に大きな割れを作り、回転運動で一瞬に割れを解放し、体幹を鋭くターンして加速することができるとリリースでボールに大きな力を伝えることができ、球速も上がりやすくなります。

このように体幹の回転は球速をあげるためにとても大切な要素ですが、その回転の中心的な役割をはたしているのは実は腰ではなく、他の部位になります。


今回はその理由を体の構造をもとに話していきたいと思います。

この内容を読んでいただけると

  • 割れが作れていない選手の原因予測を立てることができる
  • 投球による腰のケガを予防、もしくは再発を防ぐためにはどこの柔軟性を高める必要があるか理解できる
  • 「もっと腰を回せ」という指導をしなくなる

といったメリットや変化が生まれると思います。

ぜひご一読いただければと思います。

腰が回転しないのを体の構造から考えよう

Joint By Joint理論

Joint By Joint理論という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

この理論はスポーツトレーナーのMichael Boyleが提唱し、それぞれの関節の役割は可動する部位(モビリティ)と固定する部位(スタビリティ)に分けられるというものです。

そして、その可動する関節と固定する関節は交互に位置しています。

人間の体の関節はざっくりいうと上から

頚椎・胸椎・腰椎・股関節・膝関節・足関節に分けられます。

可動する関節は胸椎、股関節、足関節で固定する関節は頚椎、腰椎、膝関節に分けられます。割れを作るためにはこの概念を頭に入れておく必要があります。

こんな感じで

  • 可動する関節→胸椎・股関節・足関節
  • 固定する関節→頚椎・腰椎・膝関節

に分けられます。

当然ですが、何か運動するときに固定する関節(頚椎・腰椎・膝関節)が全く動かないという意味ではなく、

可動する関節(胸椎・股関節・足関節)が中心となって動きますよ。

という考えになります。


ピッチャーのように球速を上げるために大きな可動範囲が必要な種目ではとても大切なセオリーです。


体の構造からみてもこの理論はしっくりきます。

腰が回転することはなく、胸椎を中心に回転するべきです。

体をひねる動作をするときに腰は骨同士がぶつかり合ってしまい、

可動範囲は約5°しかありません。

それに対して腰骨の上にある胸椎は35°の可動範囲を持っています。

全然違いますよね?


仮に腰と胸椎だけで体をひねるとすると全可動域の87.5%が胸椎の可動域によるものになります。

胸椎と腰椎の解剖です。腰の回転ではなく、胸椎の可動域が必要です。


体の構造上、体をひねるときは胸椎を中心に回るべきものなのです。


「腰を回せ」

ではなく

「胸椎を回す」

が正しいのです。

ポイント

体を無理なくスムーズにひねるためには胸椎の可動域が大切

胸椎の可動域がないとどうなる?

では胸椎の柔軟性が少ない選手が体を回転しようとするとどうなるでしょうか?


この場合、胸椎が可動する関節としての役割を果たしてくれないので腰を無理やり使ってひねる動作になってしまいます。

そうすると先ほどお話ししたように本来5°しかない腰椎を酷使することになり、その動作パターンを続けていると最終的に腰のケガにつながりやすくなります。


特にウエイトトレーニングを頑張っている選手は胸周りが固くなり、胸椎の回旋可動域がすごく悪くなっている選手が多いので注意が必要です。

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【割れ】を作るために必要な可動域について

胸椎の可動域ありますか?

これからピッチャーの割れに着目してもう少し話をしていきます。

割れを作るためには胸椎の可動域が大切です。

ステップ足が着地する瞬間くらいに割れができるのですが、

ヘソ周りはステップする足につられて少しキャッチャー方向に回転します。


このときに胸椎の可動域が少ないと体幹下半分の回転につられてしまい、大きな割れを作ることはできません。

割れのフェーズです。胸椎の回旋がポイントです。

胸椎の可動域が十分にあるとその回転につられることなく、体幹上半分(胸椎)が開かずにしっかり残った状態を作ることができます。

捻転差ともいわれますが、体幹が引き伸ばされ、割れの状態ができると回転運動のときにリリースに向かっての加速を大きくすることができます。

股関節の可動域も必要

冒頭のJoint By Joint理論で説明しましたが、

腰が固定の関節でその下に位置する股関節も可動関節になります。


割れと関係するところでは、ステップ足はボールを正確にコントロールするために投げる方向に向けて開いて着地をします。

プロ野球選手の着地のときのステップ足を見るとつま先がキャッチャー方向に向いています。(正確には若干閉じ気味が多いです)

この動作を行うためには股割りの可動域(股関節外転、外旋)が必要です。

もしその可動域がない状態でつま先をキャッチャー方向に向けて着地するには体幹全体を開かざるをえなくなります。

割れを作るためには股割りの可動域も必要になります。

さきほどの図ですが、これは体の各部位がバラバラに動いていて割れを作れています。

これが股割りの可動域がないとステップ足と体幹全体がひとかたまりになり、体幹上半分も一緒にクルッと回ってしまう感じです。

鎖骨と肩甲骨も必須

割れを作るためには鎖骨と肩甲骨の可動域も大切になります。

さきほど話したようにステップ足が着地するフェーズでは、体幹下半分はキャッチャー方向に回転をはじめる(開きはじめる)のでその回転につられないように開きを抑える必要がありました。


そのために胸椎の可動域が重要なのですが、そのときに鎖骨が引けて肩甲骨が内転といって背中側に引き寄せる動きができているとスムーズに割れを作りやすくなります。


鎖骨と肩甲骨の位置がいいと腕の重みを活用して割れをアシストすることができます。

少しイメージしにくいと思いますので、投球フォーム中の肩甲骨の動きについてまとめた以前の記事も参考にしてください。

また、肩甲骨を引きよせるトレーニングについてもまとめてありますので、そちらも参考にしていただけるといいと思います!

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胸椎の可動域を高めるトレーニングについて

ウエイトトレーニングなどをガンガンやった胸周りが固くなり、胸椎を動かせなくなっている選手がとても多いです。

そのような選手は正しいトレーニングを行わないと胸椎の可動域はなかなか改善しません。

わたしが普段選手に教えている基本的な胸椎の可動域トレーニングは下の記事で動画付きで紹介しているのでそちらをご覧ください。

まとめ

腰には体を回転するための可動域は5°しかなく、体の構造上、胸椎を中心とした回転動作を身につけることが理にかなっています。


ピッチャーの割れを作るためには

  • 胸椎の可動域
  • 股関節(股割り)の可動域
  • 鎖骨、肩甲骨の可動域

が必要になります。


割れができていない選手や体の回転をスムーズにできていない選手には

「腰をもっと回せ」

と指導するのではなく、他の関節に固いところがないかチェックするようにしましょう。

Reference

  1. ファンクショナルトレーニング 機能向上と障害予防のためのパフォーマンストレーニング.文光堂 2010.