【握力】はピッチャーに必要?ケガ予防&球速アップの視点で解説

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  • ピッチャーに握力は必要なの?
  • ピッチャーはリンゴをつぶすわけじゃないから必要ない!
  • 速いボールを投げるには握力は絶対必要!

ピッチャーに握力が必要かどうかはいろんな意見があると思います。

今回、研究データを参考にして

  • 握力とパフォーマンス
  • 握力とケガ予防

この2つの視点で握力アップは必要or不要?についてまとめていきたいと思います。


「なんとなく握力トレーニングをするのはいやだ!」


という方はぜひこの記事を読んでほしいと思います。

ピッチャーに握力は必要?

まずは、研究データを参考にしてピッチャーのパフォーマンスと握力の関係について説明していきます。

プロ野球投手の握力

まず、プロ野球投手の握力についてですが、

平均59.7kg(https://www.hb-nippon.com/column/408-ueguriより引用)

というデータが出ています。


みなさんも今までに握力を測ったことがあると思うので、この数字が高いのはなんとなく分かる思いますが、平均数値がどのくらいか気になりますよね?


日本人男性の握力平均はこんな感じです。

  • 46.5kg(20〜24歳)
  • 47.2kg(25〜29歳)
  • 47.3kg(30〜34歳)
  • 47.6kg(35〜39歳)
    (文部科学省平成26年度年齢別テスト結果より引用)

プロ野球選手は10kgぐらい日本人平均より高いですね。


ただ、プロ野球選手は一流のスポーツ選手なので

一般成人の平均よりもフィジカルが高くて当たり前な気もします。


ということでこれから握力が強いと球速が速くなるのか?

について見ていきましょう。

握力と球速の関係

握力と球速を計測してその関係性を調べたデータがあります。


いくつか紹介すると

  • 握力が強いほど球速が速かった1)
  • 球速のエネルギーを生み出すのに握力が関係していた2)
  • 握力と球速の間に関係性はなかった3)

というで感じで両方の結果が出ています。


ちなみにプロ野球歴代の球速2位(2020年1月時点)で162km/hを投げた元巨人のクルーン投手の握力は

45kgしかなかったそうです。


そのため、パフォーマンスの視点でいうと握力をアップさせることで必ずしも球速が上がるとはいえませんが、ピッチャーが備えるべきフィジカルの一つとして捉えるのがいいでしょう。

ポイント

ピッチャーがハイパフォーマンスを発揮するためには下半身などの筋力や全身の柔軟性、投球フォームなどたくさんの要素がある

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握力はなぜ球速と関係しているのか

リリースのときに指で強くボールを弾くときに使う筋肉と握力を測るときに力が入る筋肉が似ている

ピッチャーはリンゴをつぶすようにボール強く握り続けているわけではないのに、握力が強いほど球速が速いというデータが出ているのはなぜでしょうか?


それはリリースのときに指で強くボールを弾くときに使う筋肉握力を測るときに力が入る筋肉が似ているからです。

肘の内側(小指側)から指にかけてくっついてる浅指屈筋や深指屈筋などの筋力が強いと握力は高くなります。


ピッチングのリリースも同じで浅指屈筋や深指屈筋がたくさん活動することでボールを強くはじくことができます。


そのため、浅指屈筋などの筋力が強い(=握力が高い)ピッチャーがその力をリリースに活かすことができると回転数が高くなり、球速もアップすることができる可能性があります。


そう考えると握力トレーニングはピッチャーにとってとても大切だといえますね!

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握力はケガ予防に必要

次に、ケガ予防の視点からみて握力が必要なのか見ていきましょう!

野球肘の原因

まず、簡単に野球肘の原因について説明します。

肘の内側には引っ張られる力(牽引力)、
肘の外側には骨と骨がぶつかる力(圧縮力)がかかり、野球肘の原因になる
(http://www.omagari-med.or.jpより引用)

投手がボールを投げるたびに肘に外反ストレスという負荷がかかっています。

  • 肘の内側→引っ張られる力(牽引力)
  • 肘の外側→骨と骨がぶつかる力(圧縮力)

このように、肘の内側と外側の両方に負担がかかっています。


特にピッチング中の

  1. 腕のしなりがMaxになる直前
  2. ボールリリースの直後

この2つのフェーズでは、瞬間的に大きな負荷が肘にかかっています。


少し話はそれますが、「肘下がり」「インステップ」「アウトステップ(開きが早い)」などの悪い投球フォームでは、1球ごとの外反ストレスが大きくなり、その状態で投球を続けていると

  • 内側側副靱帯損傷,内側上顆下端剥離骨折,内側上顆骨端離開(内側のケガ)
  • 離断性骨軟骨炎(外側のケガ)

などの野球肘になる可能性が非常に高くなります。


よくない投球フォームで投げてしまう根本的な原因やそれを改善するための専用トレーニング法、意識するべきポイントなどをそれぞれ以前の記事でまとめています。


自分の課題に合ったものを選んでぜひ読んでみてください。
ちょっとしたコツをつかむことで短期間でフォームを修正することができますよ!

肘の靱帯はもろい

エンゼルスの大谷投手も手術をした肘の内側(小指側)についている内側側副靱帯ですが、ボールを投げるたびに34.6N/mの力が肘の内側の靱帯にかかっているといわれています。

エンゼルスの大谷投手も手術をした肘の内側(小指側)についている内側側副靱帯ですが、

ボールを投げるたびに34.6N/mの力が肘の内側の靱帯にかかっている4)

といわれています。


N/mはあまり気にせず、1球なげるごとに34.6の負荷が肘の靱帯にかかるんだなあーと思ってください。


次にこんな研究データも出ています。(屍体研究)

肘の靱帯に負荷をかけていったところ32.2N/mで切れた5)

32.2の負荷で靱帯切れちゃいました。っていうことです。


ここであれって思いません?


投げるたびに
34.6
の負荷がかかっているのに

32.2の負荷で靱帯はちぎれてしまうのです。


要は1球でケガしちゃうじゃん。ということになりますが、当然、1球で靱帯が切れることはないのでそのカラクリについてこれから説明していきます。

靱帯のもろさを筋肉でカバーしよう

今説明したように肘の靱帯は1球なげる負荷に耐えられないほど弱い組織です。


それでもちぎれることなく、投げることができるのは

ポイント

靱帯の近くにある筋肉が収縮することで靱帯にかかる負荷をカバーしてくれているからです。


尺側手根屈筋と浅指屈筋
は肘の靱帯を守るように靱帯周りにくっついています6)

そして肘への負担が大きい

  • もっともしなる直前
  • リリース直後

に筋肉の活動が活発7)になり、肘の靱帯を守ってくれています。


そして、この尺側手根屈筋と浅指屈筋握力の強さに関係する筋肉でもあります。


握力が強いほど肘のケガを予防しやすいとまではいいきれませんが、

握力で使う筋肉に刺激を入れて動きやすいコンディショニングを作っておけば

ケガの予防につながるといえるでしょう。


握力はケガ予防の視点でもとても大切なのです!

握力を強くするトレーニング法について

握力を鍛えるためのトレーニング方法はあまり細かいことは気にせずにどんどん数をこなすようにしましょう。


にぎにぎボールや風呂の中でのグーパー運動などで十分に鍛えることができます。


ただ、ピッチャーが握力と同じ筋肉を使ってパフォーマンスを高めるのに重要なのはリリースのときにいかに強くボールを弾けるかということです。


握力をつけると同時にそれと並行してその力をリリースで活かすためのトレーニングを必ずやるようにしましょう。


リリースのときの指の細かい動きボールを使って回転数を高めるリリーストレーニングについては下の記事で紹介してますので、興味があるかたはそちらを読んでいただくといいと思います。

まとめ

握力がトレーニングが必要かどうなのかということを研究データを参考に話してきました。

  • 握力を強くすることで必ず球速アップにつながるとはいえない
  • ピッチャーのパフォーマンスアップに必要な要素の1つとして捉える
  • 握力で使う筋肉を実際のピッチング動作の中で活かせるかが最も重要

パフォーマンスの視点で握力はこのように考えるとよいでしょう。


また、野球肘などのケガ予防の視点では、握力のときに使われる筋肉をしっかり活動しやすい状態を使る必要があります。


握力トレーニングはピッチャーにとても大切だといえるので、ぜひ握力強化に取り組んでみてください。

Reference

  1. 野球投手のボールスピード低下に及ぼす握力の影響.仙台大学スポーツ科学研究家論文集.2003.89-96.
  2. Relationship between performance variables and baseball ability in youth baseball players. Journal of Strength and Conditioning Research.2013.27(10).2887–2897.
  3. 投球速度と筋力および筋量の関係.スポーツ科学研究.2006.3.1-7.
  4. Kinetics of baseball pitching with implications about injury mechanism.Am J Sports Med. 1986.23.233-239.
  5. Dynamic contributions of the flexor-pronator mass to elbow valgus stability.J Bone Joint Surg.2004.86.2268-2274.
  6. Functional anatomy of the flexor pronator muscle group in relation to the medial collateralligament of the elbow.Am J Sports Med.1995.23(2).245-250.
  7. Dynamic stability of the elbow: Electromyographic analysis of the flexor pronator group and the extensor group in pitchers with valgus instability.Jounal of Shoulder and Elbow Surgery.1996.5.347-354.

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