ピッチャーに腕立て伏せが必要な理由とオススメトレーニング法
ピッチャーが腕立て伏せをやるべきか賛否両論に分かれると思います。
ぼくはピッチャーに腕立て伏せトレーニングを強くオススメしたいです。
今回はその理由とピッチャーに必要な筋肉を効果的に鍛えるための腕立て伏せのやり方やポイントについて紹介していきます。
- 腕立て伏せをやるべきかやらないほうがいいのか悩んでいる
- 野球選手にオススメの腕立て伏せのやり方を知りたい
- 球速アップしたい
このような選手はぜひこの記事を読んで参考にしていただければと思います。
この記事の目次
腕立て伏せで鍛えられる筋肉
まず、はじめに腕立て伏せではどんな筋肉がたくさん動いているのかについて話していきます。
腕立て伏せのときのいくつかの筋肉の活動を計測した研究では、以下の結果が出ています。
上腕三頭筋(腕の裏側)が66%、大胸筋が61%、前鋸筋(肩甲骨と肋骨)が56%、三角筋前部(腕の付け根前側)が42%、僧帽筋上部(肩の上側)が45%
https://www.researchgate.net/publication/261579660_Objectivity_Reliability_and_Validity_for_a_Revised_Push-Up_Test_Protocolより引用
- 二の腕の裏側にあり、肘を伸ばす役割がある上腕三頭筋
- 胸周りについている大胸筋
- 肩甲骨と肋骨の間にへばりつくようにして位置する薄い層状の前鋸筋
オーソドックスな腕立て伏せでは、このあたりの筋肉がたくさん活動しているようです。
ピッチャーに腕立て伏せは必要?
次に、腕立て伏せがピッチャーにとって有効なトレーニング法なのかについて話をしていきたいと思います。
ピッチャーに必要な筋肉
まず、はじめにピッチャーに必要な筋肉について説明します。
ピッチャーは全身の筋肉を総動員し、その力をリリースの瞬間に集約させることでスピードボールを投げることができます。
そのため、数ヶ所の限られた筋肉のみに対してトレーニングをすればパフォーマンスアップすることはなく、バランスよく上半身・体幹・下半身にある全身の筋肉を鍛える必要があります。
その中でも各パーツごとにピッチャーが重点的に強化するべき筋肉があります。
上半身の筋肉でいうと
肩甲下筋・棘上筋・棘下筋・小円筋などの肩インナーマッスルや上腕三頭筋、大胸筋、前鋸筋、広背筋あたりはトレーニングが必要不可欠です。
腕立て伏せでは、先ほど説明したように上腕三頭筋、大胸筋、前鋸筋が活動する量が多く、ピッチャーにとって重要な筋肉をまとめて効率よく強化することができるといえます。
ちなみに腕立て伏せではなかなか鍛えることができないインナーマッスルと広背筋も必ずトレーニングするようにしましょう。
- ピッチング動作で広背筋がどれだけ重要な役割を果たしているか
- 広背筋トレーニングのポイント
このあたりは以下の記事でまとめてありますので、そちらもぜひ参考にしてください。
ピッチング中の上半身筋肉の役割
腕立て伏せでは
- 上腕三頭筋
- 大胸筋
- 前鋸筋
を鍛えることができ、ピッチャーはこられの筋肉がパフォーマンスアップに欠かせないという話をしてきました。
この3つの筋肉がピッチング動作のどのフェーズで活躍しているのか簡単に話します。
ピッチング中の上腕三頭筋
上腕三頭筋は腕がしなったときに瞬間的に引き伸ばされます。
引き伸ばされたところからリリースに向かって肘が伸びていきますが、このときに上腕三頭筋が収縮します。
上腕三頭筋の筋力が高いと、しなり→リリースへの解放を力強く行うことができ、球速アップにつながりやすくなります。
腕のしなりからリリースにかけて上腕三頭筋の活動がものすごい高いわけではないのですが、スピードボールを投げるためには上腕三頭筋の強化は大切です。
ピッチング中の大胸筋
次は大胸筋についてです。
「大胸筋ピッチャー不要論」は聞かれることが多いと思いますが、投球動作から紐解くと、球速アップに大胸筋の力はとても重要です。
ステップ足が地面に着地した瞬間を見てください。
この瞬間では下半身と骨盤は投球方向に向けて回転を始めていますが、右胸周りと右腕は開きを抑えるために回転せずに三塁方向を向き、右腕は背中側に引かれます。
この割れの形ができていると、大胸筋は強く引き伸ばされた状態になります。
上腕三頭筋と同じ原理で筋肉が引き伸ばされた状態から急激に収縮することでハイパワーを発揮することができ、爆発的に腕を加速することができます。
大胸筋は人間の数ある筋肉の中で、大きな筋力を発揮することができる有数の筋肉です。
しっかりと大胸筋を鍛えて球速アップにつなげるようにしましょう。
ピッチング中の前鋸筋
最後に前鋸筋です。
前鋸筋は上の図のように肩甲骨から肋骨にかけて付いている筋肉です。
前鋸筋が収縮することで肩甲骨を背中の外側に開くようにスライドさせてくれます。
リリースやフォールスルーで前鋸筋がきちんと働くと、腕と肩甲骨を一体化させることができ、腕を長く使えるようになります。
ピッチングのフェーズごとにおける肩甲骨の重要性は下の記事で詳しくまとめていますので、そちらをご覧ください。
ピッチャーにとって肩甲骨がいかに大切なのかを理解することができます。
腕立て伏せのメリット
腕立て伏せのメリットは自宅で器具を用意しなくても手軽にトレーニングできる点です。
また、自重トレーニングでありながら、ベンチプレスに近いトレーニング効果を出すことができると言われていてとてもコストパフォーマンスが高いトレーニングといえます。
ピッチング動作に必要な筋肉にターゲットし、筋肉が固くならないようにストレッチなどのケアも並行して行えば、ぜひ取りいれていきたいトレーニングになります。
腕立て伏せは自宅でも簡単にベンチプレスに似たようなトレーニング効果を期待することができる
ピッチャーにオススメの腕立て伏せのやり方
これから上腕三頭筋・大胸筋・前鋸筋を効率よく鍛える腕立て伏せのやり方について紹介していきます。
正しいフォームで腕立て伏せをしよう
腕立て伏せは手の幅によって力が入る筋肉が大きく変わってきます。
下のデータは
- 手の幅を狭める
- 肩幅
- 手の幅を広げる
の3パターンで腕立て伏せをしたときの筋肉の活動具合を比較したものです。
肩幅で腕立て伏せをしたときのそれぞれの筋肉の活動を100%としています。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpts/28/2/28_jpts-2015-751/_article/-char/ja/より引用
筋肉 狭い(肩幅の1/2) 肩幅 広い(肩幅の2倍) 大胸筋 115.0% 100% 92.3% 上腕三頭筋 116.5% 100% 86.0%
前鋸筋 71.2% 100% 119.2%
棘下筋 162.7% 100% 75.7%
大胸筋と上腕三頭筋は肩幅の1/2の広さで腕立て伏せをすると刺激を与えやすくなるのが分かります。
また、手の幅を狭くすることで肩のインナーマッスルである棘下筋に刺激を加えることができ、投手にとって手幅を狭くした腕立て伏せはオススメのトレーニング法になります。
また、前鋸筋は手幅を広げることで筋肉の活動が高くなる(119.2%)という数値が出ていますが、手幅を広げた腕立て伏せでは肩の前側(上腕二頭筋長頭筋腱、腱板疎部など)に負担がかかりやすく、肩を痛める危険性が高いのでオススメできません。
このあと紹介する肩甲骨プッシュアップは肩への負担をおさえつつ、前鋸筋に対して高いトレーニング効果をもたらすことができますので、ぜひ実践してみてください!
- ピッチャーは肩幅1/2の幅で腕立て伏せ(ナロープッシュアップ)でトレーニングする
- 前鋸筋の強化は手幅を広げるよりも、肩甲骨プッシュアップで集中的に強化する
ナロープッシュアップ
上腕三頭筋、大胸筋、インナーマッスルである棘下筋を強化できるナロープッシュアップのやり方は下の動画が参考になりますのでそちらをご覧ください。
引用:https://www.youtube.com/watch?v=nVgGzBgZSv8
肩甲骨プッシュアップ
肩甲骨の動きを高めてくれる前鋸筋を集中的に強化できる肩甲骨プッシュアップの方法は下の動画を参考にしてください。
動画の最初に前鋸筋の役割についても解説してくれていますので、ぜひご覧ください。
引用:https://www.youtube.com/watch?v=VK86bUgnkWs
腕立て伏せをやるときの注意点
腕立て伏せのトレーニングは負荷が強いので、以下の点を注意するようにしましょう。
手首のケガに注意
腕立て伏せは全体重が手首にかかるので、痛みが出ないように負荷調整を考慮しましょう。
安全に腕立て伏せをするためにはこのあと紹介するトレーニングギアが重宝されます。
肩前側の痛みに注意
腕立て伏せトレーニングで、まずはじめに気をつけないといけないのが肩のケガをしないことです。
特に、肩の前側に痛みが出る危険性がありますので、筋力が弱い選手は膝をついても構いません。
徐々にトレーニング回数を増やすようにしましょう。
【重要】プッシュアップバーがおすすめ
安全にかつ自分の筋力に合わせて効率よくトレーニングするための1つの方法にプッシュアップエリートがあります。
こちらの写真のような通常のプッシュアップバーだととても不安定なうえに手首にかかる負担が大きくなってしまいます。トレーニング中にバーが倒れてケガをしそうになったという方は多いのではないでしょうか。
そんな問題点を解決してくれるのがプッシュアップエリートです。
プッシュアップエリートは回転式ハンドルになっています。
そのため、腕立て伏せをしているときにかかる手首への荷重を分散させてくれます。
また、ハンドルの安定性もバツグンなのでバーがグラグラすることはありません。さらに、回転式ハンドルのおかけで腕の曲げ伸ばしをしやすくなっているので、初心者でも手軽に腕立て伏せトレーニングを導入することが可能です。
こちらの商品は口コミもかなり高いようです。
- 手首の負担を減らせる
- 初心者でも取り組みやすい
- 上腕三頭筋を強化しやすい
筋肉が固くならないように注意
2つ目に気をつけたいことは筋肉が固くなって柔軟性が低下してしまうことです。
特に、腕立て伏せトレーニングを行うと、胸周りや胸郭が固くなりやすいです。
胸周り・胸郭の柔軟性が落ちてしまうと、割れの形を作りずらくなり、開きが早くなりフォームのバランスが乱れやすくなります。
また、全身をダイナミックに使った投球フォームが失われてしまい、投球のパフォーマンスが著しく落ちる可能性があります。
腕立て伏せトレーニングを導入する場合は、必ず胸回り・胸郭周りの可動域向上トレーニングを時間かけて行うようにしてください。
大胸筋・胸郭のストレッチ
腕立て伏せで固くなりやすい大胸筋や胸郭周りのストレッチの方法を以下に挙げておきますので、動画をみながら実践してみてください。
まとめ
腕立て伏せでは、どの筋肉をトレーニングすることができるのか。また、ピッチャーにオススメの腕立て伏せトレーニングの方法について紹介しました。
ピッチャーが腕立て伏せを行う際のポイントは以下の通りです。
- 手幅を肩幅より狭くして上腕三頭筋・大胸筋・棘下筋の強化を行う
- 肩甲骨プッシュアップで前鋸筋を集中的に強化する
- 胸周り・胸郭周りが固くなりやすいので、必ず可動域トレーニングも並行して行う
腕立て伏せは手軽に行えるピッチャーオススメのトレーニングです。
いきなり無理をせずに少しずつ回数を増やすようにして取り組んでみてください!
Reference
- Objectivity, Reliability, and Validity for a Revised Push-Up Test Protocol.Measurement in Physical Education and Exercise Science 6(4).2009.225-242.
- Effect of the push-up exercise at different palmar width on muscle activities.J. Phys. Ther. Sci 28.2016.446–449.
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