【未経験者でも絶対分かる】犠牲フライの意味と打率・打席数など記録のつけ方

犠牲フライを理解するにはタッチアップというルールとセットで覚えると頭に入りやすく、理解できると試合中に犠牲フライがおきたらハラハラしながらより一層野球観戦を楽しむことができます。
この記事では犠牲フライとタッチアップのルールを野球未経験の小学生でも分かるように完全図解で解説しています。

犠牲フライは勝敗を分けるプレーになることもあるとても見応えのある瞬間です。
しかし、この犠牲フライはあっという間に終わってしまうプレーであるので、野球未経験の方からすると
「今何が起きたの?」
と思う方もいると思います。
今回は野球未経験の方でも犠牲フライのルールが分かるように図とイラストで解説しています。
この記事を読んで犠牲フライのルールを知ることで緊迫した場面での犠牲フライをハラハラドキドキして見ることができるようになり、より一層野球観戦を楽しむことができるようになります。
芹田祐(セリタタスク)
理学療法士として整形外科病院・整形外科クリニックなどに10年ほど勤務。野球現場では小学生からプロ野球まで幅広い年代の選手に対して述べ1000名以上のリハビリテーション・トレーニング指導経験あり。
保有資格
理学療法士/認定理学療法士/JARTA認定トレーナー/国際認定シュロスセラピスト/修士(医科学)
この記事の目次
犠牲フライとは
攻撃しているチームが犠牲フライに成功するとそのチームに得点が入ります。
犠牲フライが成功したときの映像です。攻撃側のランナーがホームまで帰った時に1点が入っています。
犠牲フライは省略して犠飛ともいい、英語ではsacrifice flyといわれています。

犠牲フライを正しく理解するためには、先にリタッチとタッチアップというランナー側のルールを知る必要があります。
リタッチとタッチアップを理解できると、一気に犠牲フライのことも分かりやすくなります。
ということでまずはランナー側のルールであるリタッチとタッチアップについて説明していきます。
フライは一度塁に戻る義務がある

バッターがフライを打ち上げてキャッチされたとき、ランナーは一度もともと自分がいた塁に戻ってベースに触れないといけません。
ベースに触れてからは次の塁に進んでもOKになります。
このルールのことをリタッチといいます。

ただし、リタッチしても次の塁に進めるのは守備側がフライに触れたとき、つまりグローブに当たった瞬間からと決まっています。
リタッチはランナーが1塁・2塁・3塁のどこにいても全てのランナーに適応される大前提のルールです。
リタッチしないとアウトにされる
リタッチしないとランナーはどうなると思いますか?

フライをキャッチした後にランナーがいた塁までボールを投げ、ランナーよりも先にベースに触れるとアウトになってしまいます。
タッチアップとは?
リタッチすることを別名タッグアップ(tag up)といいます。
タッグアップはTouth(触れる)とUp(上げる)を合わせた野球用語です。
実際、野球現場でタッグアップということはなく、だいたいタッチアップといいます。

また、タッチアップはランナーがフライがキャッチされたのを見て次の塁に走ったときに使われます。
このように、正式ルールではリタッチとタッチアップに違いはないのですが、実際の野球現場では言葉の使われ方に違いがあることを覚えておきましょう。
ちなみにタッチアップはどこに飛んだフライでも行うことができます。
つまり、内野フライ、外野フライ、ファウルゾーンなどどのフライでも、きちんとリタッチして守備側がボールにふれた瞬間からは次の塁を狙うことができます。
- フライのときにベースに戻って触れる→リタッチ
- フライのときに次の塁に進もうとする→タッチアップ
タッチアップはランナーと守備の競争
ランナーは無条件でタッチアップして次の塁にどんどん進めるわけではありません。
次の塁に向かって走っても、自分よりも先に守備側に次の塁へボールを運ばれてしまうとアウトです。

つまり、ランナーと守備側の競争になるのがタッチアップです。
そのため、ランナーはむやみやたらにタッチアップすることはありません。

自分の走力vsフライが上がった位置・相手守備の肩の強さなどを天秤にかけて相手よりも早く次の塁に行けると思ったときにタッチアップを試みます。
タッチアップが一番起こりやすい場面は外野フライです。
これは外野フライだと三塁やホームまでの距離が遠く、守備側がフライをキャッチしてからベースまでボールを届かせるのに時間がかかるからです。

しかし、いいランナーは常に次の塁をねらっているので外野フライ以外でタッチアップするケースもあります。
例えば下のプレーをご覧ください。
こちらはキャッチャーフライでランナーが二塁にタッチアップをしたシーンです。
簡単なキャッチャーフライではタッチアップするのはほぼ不可能です。
しかし、このプレーのようにギリギリのところでキャッチした場合、セカンドまでの距離があり、体勢を立て直して投げるまでに時間がかかってしまいます。
その隙をみてタッチアップをしたランナーが素晴らしい!の一言に尽きるプレーです。
タッチアップと犠牲フライの違い
タッチアップと犠牲フライは基本的には同じ意味です。
ただ1つ違うことろは犠牲フライは攻撃側に得点が入ったときにしか使われません。

そのため、さきほどの映像のプレーは1塁から2塁に進むことに成功していますが、得点は入っていないので犠牲フライとはいいません。
三塁ランナーがタッチアップしてホームに帰ることに成功して1点入ったら犠牲フライになると覚えておきましょう。
【高校野球】松山商業の奇跡のバックホーム
「松山商業の奇跡のバックホーム」をご存知ですか?
1996年夏の甲子園の決勝戦は愛媛県代表の松山商業と熊本県代表の熊本工業の対戦でした。
試合は3対3で同点のまま延長戦に入り、10回裏熊本工業の攻撃は1アウト満塁で大きなライトフライが上がりました。
ライトの後方に上がった大きなフライだったので、犠牲フライが成功して熊本工業の優勝が決まると多くの人が思いました。

しかし、松山商業のライトの選手がホームに見事な送球をして3塁ランナーをアウトにして熊本工業のサヨナラ勝ちを阻止しました。
このプレーは松山商業の「奇跡のバックホーム」として語り継がれています。
そのシーンがこれです。
ちなみに、延長11回表に松山商業は3点をとり、その裏の熊本工業の攻撃を抑えて6対3で勝利して優勝を果たしています。
このように犠牲フライは3塁ランナーと守備側の競争でギリギリのプレーになることが多いのでとても見応えのある瞬間です。
犠牲フライが起こるケース
今までの説明をふまえて犠牲フライが起こる場面をまとめます。
<アウトカウント>0アウトか1アウト
<ランナー>3塁ランナーがいる


ランナーは3塁にいればOKなので、他の塁にランナーがいてもいなくても関係ありません。


このようにランナー1・3塁やランナー2・3塁でも犠牲フライの可能性があります。
守備側はアピールできる
フライに触れる瞬間より前にランナーが次の塁に進んだと思ったら守備側はボールを元々いた塁に投げてベースに触れます。
審判がランナーがベースを離れて次の塁に進むのが早かったと判断すればそのランナーはアウトになります。

おもしろいのはランナーがリタッチせずに次の塁に進塁したのを守備側が気づかなければ、審判からアウトを宣告することはなく、ランナーが次の塁に進んだ状態でプレーが再開します。
- ランナーがきちんとリタッチしたか
- フライに触れてから次の進塁したか
守備側はこの2点をきちんと見ておく必要がある
【プロ野球】犠牲フライで2点入ったケース
プロ野球では犠牲フライで一気に2点入った珍しいケースもあります。
下の映像をご覧ください。
西武のセンターが浅め(内野に近い位置)に守っていたけど、大きなフライが上がったので猛ダッシュで後ろに下がっていきます。
フライをなんとかキャッチすることはできましたが、後ろ向きでのキャッチとなり、体勢も崩れてしまっています。
そのため、すぐに内野までボールを返すことができませんでした。
その隙をみて2塁ランナーだったロッテの角中選手が2塁から一気にホームまで戻ってきて2点が入ったというシーンです。
おそらくですが、角中選手はセンターが浅めに守っているのを事前に確認していたと思います。
打ち上げたフライがかなり深かったので、リタッチしておいてもしキャッチできなければそこからでもホームまで帰れるし、ギリギリのところでセンターがキャッチしたらタッチアップで次の塁に進むことを狙っていたのだと思います。
犠牲フライにならないケース
犠牲フライにならないケースを紹介します。
2アウトの場面
2アウトの場面では守備側がフライをキャッチしたら3アウトとなり、その時点で攻撃終了となるので犠牲フライにはなりません。
攻撃側に得点が入っていない場合
これはさきほど説明したとおりです。
得点が入らずにランナーが次の塁に進んだ場合は犠牲フライではなくタッチアップになります。
犠牲フライのときの成績と記録
ここからは犠牲フライを打ったバッターの記録がどうなるかについて紹介します。
打数はどうなるのか
犠牲フライの記録上の扱いは犠牲バントと同じです。
犠牲バントは打数に入らないので犠牲フライも打数に入りません。
打率はどうなるのか
打率はこのような計算で決まります。
打率=安打数(ヒット数)÷打数
さきほど紹介したように、犠牲フライは打数にカウントされません。
ヒットでもないので打率は下がりません。
1点差など僅差の場面では、バッターは狙って外野フライを打ちにいくことがあります。
犠牲フライは立派な打撃技術なのです。
打点はどうなるのか
犠牲フライで得点が入るので打ったバッターには打点がつきます。
ほとんどないケースですが、さきほどのロッテ角中選手のように犠牲フライで2塁ランナーもホームに帰れば、攻撃側に2点が入るので犠牲フライを打ったバッターに打点2がつきます。
出塁率はどうなるのか
出塁率はこのようにして計算されます。
出塁率=(安打数+四球+死球)÷(打数+四球+死球+犠性フライ)
計算式に犠牲フライが含まれています。
犠牲フライを打つことで出塁率は下がってしまいます。
犠牲フライを防ぐための故意落球とは?
こちらは巨人対阪神の映像です。2対1で巨人が勝っている場面です。
試合は9回裏でノーアウト1・3塁で巨人が攻撃しています。

試合展開としては、バッターの巨人坂本選手がファウルゾーンに大きなレフトフライを打ち上げます。
阪神のレフトがそのフライをキャッチしますが、大きなフライのため、巨人の3塁ランナーは悠々とホームに帰ってきて巨人に1点入って同点になったという流れです。
阪神からしたらこの回を0点に抑えれば勝利になるので絶対に1点もとられてはいけない場面です。
坂本選手のレフトフライがフェアゾーン内であれば、キャッチしないとヒットになるので当然取りに行かないといけません。
しかし、このケースではフライがファウルゾーンに飛んでいるので落としたとても打ち直しになるだけです。
点差が開いていて1つでもアウトを確実にとった方がいい場合はファウルゾーンのレフトフライをキャッチしてもいいと思います。
しかし、このケースは1点でもとられてはいけいないので坂本選手が打ったレフトフライをとるべきではなかったのかもしれません。
このように戦略的にわざとボールをキャッチせずに落とすことを故意落球といいます。
インフィールドフライのときには故意落球を使うことができませんが、外野フライで故意落球することはルール上全く問題ありません。
インフィールドフライの詳しい解説はこちらの記事が参考になります。
【図解で必ず分かる】インフィールドフライの条件とよくある疑問
僅差の場面ではファウルゾーンの外野フライをわざとキャッチしないことで犠牲フライを防ぐことがある。
犠牲フライのルールを知って野球観戦をより楽しもう
犠牲フライのルールは少しややこしいですが、接戦の場面ではとても見応えのある瞬間になります。
犠牲フライのルールをまとめると以下の通りです。
- 犠牲フライとタッチアップは基本的には同じ
- 犠牲フライは得点が入ったときのみ使われる言葉
- フライのときランナーはリタッチしてから次の塁に進む義務がある
また、犠牲フライの成績や記録上の扱いは以下の通りです。
- 打席数にカウントされないので打率は下がらない
- 打点はカウントされる
- 出塁率は下がる
野球のルールを知ることで野球観戦がより楽しくなると思います。
犠牲フライが起こる場面は外野フライが飛ぶことを期待して野球観戦をしてみてください!