プロ野球【人的補償】の仕組みを徹底解剖!よくある疑問もクマなく解説
プロ野球のオフシーズンによく聞く人的補償の定義からプロテクトやAランクなど細かい仕組みまで徹底解説しています。この記事を読めば、人的補償とは何かが分かり、オフシーズンに行われるプロ野球の移籍情報を楽しむことができるようになります。
プロ野球好きのみなさん「人的補償」という言葉を聞かれたことがある方は多いのではないでしょうか?
特に、シーズンオフの11月~12月に人的補償という言葉を耳にする機会が増えます。
プロ野球には専門用語やルールが多く、人的補償という言葉を聞いたことがあっても細かい仕組みまで知っている人は少ないと思います。
人的補償とは何かを理解するとオフシーズンに行われる移籍事情やチームの戦力分析ができるようになり、よりプロ野球を楽しむことができるようになります。
今回は人的補償の概要と仕組みについて紹介していきます。
- 人的補償とはなにか
- 選手を守るプロテクト制度とは
- Aランク・Bランクの違い
この記事の目次
人的補償とはなに?
人的補償とはなにかを理解するにはFA(Free Agent)制度も知っておく必要があります。
FA(Free Agent)は日本語に直すと「自由行為者」で「自分の行為を自らが決定できる者」という意味です。
プロ野球では他球団も含めてどの球団とも選手契約を結ぶことができる権利を持つ選手をいいます。
人的補償はFA権を使って選手が他のチームに移籍したときに発生する制度です。
プロ野球のFA制度について詳しく知りたい方は日本プロ野球選手会公式ホームページのコラムをご参照ください。
FA制度で移籍をされた側の球団は有力選手が減り、戦力がダウンしてしまいます。
戦力がダウンして球団が弱くなると球団間での実力差がでてしまい、プロ野球全体の盛り上がりにかけてしまいます。
そのためFA制度で選手が流出したチームの戦力ダウンを抑えるために、選手を獲得した球団から別の選手を補強することができます。
この制度が人的補償です。
しかし人的補償はFAをすれば100%発生するものではありません。
プロ野球FA制度の年俸ランク
1つのチーム内で選手に年俸ランクがついています。
チーム内で年俸上位1~3位がAランク、4位〜10位がBランクになります。
11位以降の選手はCランクです。
Cランクの選手が移籍したときには人的補償は発生しません。
- 人的補償はAランク・Bランクの選手が移籍したときに発生
- Cランク選手の移籍では人的補償がない
プロ野球の各球団はFA取得前年に年俸を上げる?
人的補償は選手の年俸変動に影響をあたえています。
例えば、FA権を取得する選手の年俸を球団が急激に上げる時があります。
これは来シーズンFAを取る選手をA・Bランクにしてしまおうという狙いです。
さきほど話した通り、移籍される球団側からするとCランクの選手がFA移籍すると人的補償がないので戦力的に大きな痛手になります。
そのため、FA移籍が予想される選手の年俸を上げて最低でもBランクに入れておき、移籍をされたときに人的補償を受けられるようにすることができるのです。
またFAの権利を取得するためには1軍で7~8年の選手登録が必要です。
それだけ長い間1軍登録されている選手ということは必然的にチームの主力選手であることがほとんどです。
そういった選手が球団から出ていかれると困ってしまうため、人的補償狙いではなく、純粋に選手流出を防ぐために年俸を上げる傾向があります。
人的補償の概要
人的補償でどの選手でも獲得できるというわけではありません。
具体的にはこのようなルールがあります。
新人選手は対象外
育成選手は対象外
シーズンオフに入団が決まっている選手はプロテクトする必要あり
複数年契約選手はプロテクトする必要あり
外国人枠の適用外となった外国人選手はプロテクトする必要あり
いくつか「プロテクト」という言葉が出てきています。
プロテクトは人的補償の仕組みを知る上で重要な言葉です。
ここからはプロテクトについてくわしく説明をしていきます。
プロテクトとは?
プロテクトとは「この選手は人的補償としてとることができない」という制度です。
人的補償でだれでも獲得できたら、FA制度が崩壊してしまうのでプロテクト制度が存在します。
人的補償を利用するチームはプロテクトから外れた選手から獲得する人を選ばないといけません。
プロテクトをかけられる人数には制限があります。
その人数は支配下登録選手全員のうち【28人】です。
28と聞くと多いように感じると思いますが、レギュラー選手・1軍選手をプロテクトしたら20人くらいはすぐに埋まってしまいます。
この28人という数字は多いように見えて実はかなり少ないのです。
そのため、どの選手をプロテクトし、またプロテクトから外すのかは球団にとって苦渋の決断となります。
将来有望な若手選手を守るためにベテラン主力選手がプロテクトから外されることもあります。
球団としては若手を取るか長年チームに貢献してきたベテランを守るのか悩むところですが、近年は若手選手をプロテクトする球団が増えてきています。
プロテクトリストは分けて提出ができる
A球団がY球団とZ球団の2チームからそれぞれAランクのFA選手を獲得したとします。
その場合A球団はYとZの2球団に人的補償を出さないといけません。
このときのポイントとしてAはYとZに全く同じプロテクトリストを提出する必要はありません。
つまり、各球団に別々のプロテクトリストを送ることができるのです。
球団によって補強ポイントは異なってきます。
例えば、Y球団は投手が欲しくてZ球団は外野手が欲しいとします。
A球団はその状況を見越してプロテクトリストを作成して対応することができます。
Y球団に送るリストにはピッチャーを多めにプロテクトし、Z球団に送るリストには外野手を多めにプロテクトするといった感じです。
プロテクトリストを作るというのは球団側の大切な仕事であり、見えないところで大きな駆け引きがされています。
Aランク選手とBランク選手の違い
FA選手を獲得した球団は人的補償だけでなく、お金を相手球団に支払う必要があります。
このときに支払う額の条件がAランクとBランクで異なります。
- Aランク:年俸の0.5倍支払う
- Bランク:年俸の0.4倍支払う
例えば、年俸3億の選手を獲得したとします。
この選手が
- Aランクの場合:3億×0.5=1.5億
- Bランクの場合:3億×0.4=1.2億
これだけの額を相手球団に支払ないといけません。
FA選手を獲得するということは、それだけ多くの対価を支払う必要があるということになります。
人的補償なしの場合はどうなるの?
人的補償で選手をもらう側のチームがプロテクトリストを見て獲得したい選手がいないこともあります。
そのときは人的補償をせずに金銭補償が行われます。
金銭補償される金額はランクによって変わってきます。
Aランク:年俸の0.8倍支払う
Bランク:年俸の0.6倍支払う
無理に人的補償を利用しなくても、金銭補償を使えば多額のお金が手に入ります。
その資金で別の選手を獲得することも可能です。
人的補償で新たな選手を獲得することはせず、金銭補償を利用するケースはよくあることです。
人的補償は宝の宝庫?
人的補償で球団を変えたことで才能が開花し、成績が向上した選手はたくさんいます。
代表的なのが一岡投手です。
2013年に元広島の大竹選手がFA権を行使して巨人に移籍しました。
このときの人的補償で巨人から広島に移籍したのが一岡投手でした。
一岡選手は巨人時代には目立った活躍をすることができませんでしたが、人的補償で広島に移籍して才能が一気に開花しました。
移籍1年目の2014年は31試合に登板して
- 2勝0敗2セーブ
- 16ホールド
- 防御率0.58
このような好成績を残しました。
人的補償の見方
ここまで人的補償について紹介してきました。
基本的な内容は理解できたのではないでしょうか?
人的補償はシーズンオフ中の楽しみ方の一つです。
見方のポイントを挙げておきます。
1.贔屓球団がFA選手を放出するか
獲得球団は連日のように候補として挙がってくるかと思います。
候補に挙がった球団の選手一覧を見て
「誰がプロテクトされるのか」
「チームの弱いポイントを補強できるのは誰か」
などプロテクトを考え、人的補償にだれが来るか予想してみましょう。
2.贔屓球団がFA選手を獲得する場合
FA選手をどのポジションで使いどのような起用するかを予想しましょう。
さらに、FA選手がAランクかBランクの場合、人的補償がだれになるかを予想しましょう。
「有望な若手を放出するのか」
「精神的支柱のベテランを放出するのか」
などを考えてみましょう。
3.人的補償選手の活躍チェック
人的補償で出された選手が元所属球団と対戦すると熱く燃え上がりませんか?
球団からプロテクト外にされたわけですから、選手もよりいっそう気合が入ります。
そういった選手が古巣相手に活躍する姿を見るとファン心理としては非常にうれしいかと思います。
人的補償はそういった「リベンジマッチ」を楽しむことができるのも大きな特徴です。
人的補償に注目しよう
シーズンオフになると、プロ野球の話題はFA移籍と契約更改になります。
プロ野球ファンにとってこの2つの話題は気になるところですが、今後は人的補償にも注目してみましょう。
今までと違った見方でチーム分析や移籍の裏で起きている駆け引きを見ることができます。
特に、人的補償で意外な選手を獲得できた場合、FA移籍する以上に話題になるときもあります。
また、FA選手よりも人的補償でとった選手のほうが活躍するというパターンも珍しくありません。
人的補償制度をしっかりと理解して、シーズンオフも野球を楽しんで開幕をしたら選手たちをしっかりと応援するようにしていきましょう。
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