【球速アップ】のための肩インナーマッスルトレーニングの正しいやり方
インナーマッスルはとても繊細な筋肉です.
そのため、正しいやり方でインナーを刺激するトレーニングをしないと
アウターマッスルばかりを使ってしまい、筋肉のバランスがどんどん崩れていきます。
インナーマッスルがきちんと入るとパフォーマンスアップになるだけでなく、怪我予防にもつながります。
逆にインナーマッスルを使えていない選手は
- 腕の力がうまく伝わらず、パフォーマンス低下が起きる
- 腕を動かしたときに関節の中でグラグラ動いて怪我のリスクが高まる
などのデメリットが出てきます。
今回、記事の前半ではインナーマッスルの特徴などについて簡単に説明をして
それを踏まえたうえでピッチャーにオススメのインナーマッスルのトレーニング法を紹介していきます。
理論あっての効率いいトレーニングなので前半部分からしっかり押さえるようにしましょう!
この記事の目次
インナーマッスルって何だろう?
インナーマッスルは4個あります
インナーマッスルは1つの筋肉ではなく、肩周りにある4種類の筋肉のことをいいます。
上の図は背中側から見たものですが、肩のインナーマッスルは
- 棘上筋
- 肩甲下筋
- 棘下筋
- 小円筋
の4種類あります。
全ての筋肉が肩甲骨から腕の付け根に向かって付いています。
インナーマッスルの役割について
インナーマッスルは
- 腕を上げる
- 外旋する(脇を閉じた状態で手を外側に開く動き)
- 内旋する(脇を閉じた状態で手を内側に開く動き)
などに加えて
上腕骨頭を求心位に保つことで肩関節を安定させる1)
という役割があります。この関節を安定させるというのがものすごく重要なのでもう少し詳しく説明していきます。
インナーマッスルが肩関節を守ってくれる
さきほどの絵をもう一度みてみましょう。
4種類のインナーマッスルは腕の付け根の周りを囲むようにしてピッタリ付いています。
そのため、インナーマッスルにキュッと締めるように力が入ると
このように腕の付け根が肩甲骨に吸い付くような感じで引き寄せてくれます。
これが「肩関節を安定」させるということにつながります。
なぜ腕の付け根を引きよせる必要があるのかといいますと肩関節の構造が関係しています。
肩関節は小さい受け皿(肩甲骨)の上に大きなボール(腕の付け根)が乗っかっている形をしています。
ボールが上に乗った状態でコロコロと色々な動きをすることで腕をあげたり、手を後ろに回したりなどなど様々な動きをすることができます。
しかし、受け皿となる肩甲骨側の面積がものすごく小さいためにボールが落ちやすくなっています。
ティーアップされたゴルフボールをイメージしていただくと分かりやすいと思います。
受け皿の上に安定して乗っかった状態で腕を動かすことができなければ、関節としてとても不安定な状態で
- 力を効率よく発揮することができない→パフォーマンスが上がりにくい
- 肩関節にかかる負担が大きくなる→肩のケガにつながりやすい
というデメリットが出てきます。
そのため、インナーマッスルを使って腕の付け根を受け皿である肩甲骨の上に引き寄せた状態を作ることではじめて
パワーロスがなく、体への負担が少ない効率がよい腕の動きができるようになります。
特にピッチャーの場合は前方不安定性といい、付け根の骨が前側にグラグラしやすく、
この状態でボールを投げ続けると腱板疎部損傷などのケガにつながりやすくなってしまいます。
インナーマッスルは効率よく腕を動かすための土台作りとしてとても重要
ピッチングでインナーマッスルはいつ動いているのか
ピッチング中に棘下筋がどのくらい活動しているかを測定した研究があります2)。
アーリーコッキング (腕を上げるとき) | レイトコッキング(腕がしなるとき) | リリース直後 | フォロースルー |
21% | 35% | 35% | 40% |
力くらべでMAXまで棘下筋に力を入れたときを100%とすると
テイクバックで腕を上げるときは21%しか活動していませんでした。
それに比べてフォロースルーのときには約2倍の40%も活動していました。
つまり、棘下筋は上の写真のような腕の位置が低いテイクバック初期(腕の上げ始め)で多く活動するのではなく、
リリースやフォロースルーなど腕の位置が高いときにたくさん活動しているということになります。
棘下筋以外のインナーマッスルも同じような傾向3)があります。
波が荒いところで筋肉が活発に動いていると思ってください。
これを見るとリリース直前からフォロースルーでたくさん働いているのがわかると思います。
ピッチング中にインナーマッスルは
腕の位置が高いリリース直前〜フォロースルーで活躍している
リリース直前〜フォロースルーでインナーマッスルが活動するのはなぜ?
リリース直前〜フォロースルーはキャッチャー方向に向けてものすごい高速で腕が振られます。
そのため、腕には肩からスッポ抜けてしまう大きな力が働いてしまいます。
怖いですよね・・・
スッポ抜けてしまうと大変なことになるので腕が抜けないように
キュッと収縮して引きとめてくれているのがインナーマッスルです。
腕の付け根を囲むように付いているインナーマッスルだからこそできる役割で
最初に説明した上腕骨頭を求心位に保つことで肩関節を安定させるということになります。
大事な内容なのでもう一度確認する方はこちらから戻りましょう!
腕が抜けるまではいかなくても
インナーマッスルの筋力が落ちていると腕の付け根が関節の中で色々な方向に動いてしまい、
ケガにつながりやすくなってしまいます。
インナーマッスルのトレーニングを見直しませんか?
みなさんインナーマッスルのトレーニングというとどんなのを思い浮かべますか?
おそらくこんな感じで脇を閉じて肘から先を動かすやり方をイメージした方が多いと思いのではないでしょうか。
このトレーニングがダメというわけではありません(棘下筋などに刺激は入ります)が、
今まで説明したように
実際のピッチングでは腕が高い位置のときにインナーマッスルは活躍しています。
その前提を踏まえたトレーニングを実践することが
- パフォーマンスアップ
- ケガ予防
につながりやすくなります。
ではこれからは実際のトレーニング方法について一緒に見ていきましょう!
0ポジション外旋トレーニング
- 腕を写真ぐらいの角度に開いてうつぶせで寝る
- 肘は地面につけたまま、手をいけるところまで持ち上げる
0ポジション外旋トレーニングの回数目安
20回×3セット
20回で余裕がある選手は右手に500mlのペットボトル(水入り)を持ってやるようにしましょう。
チューブ外旋トレーニング
このトレーニングはセラバンドやチューブが必要です。
- 肘を肩より少し低い位置にしてテーブルの上に乗せます。肘は体の正面よりも若干外側に置きます。
- 肘の位置は変えずにチューブを外側に引っ張ります。
- 元の位置にゆっくり戻します。
チューブ外旋トレーニングのポイント
集中してゆっくり動かすようにしてください。
3秒で1〜2の位置までいく
戻るときは5秒かけて2〜3の位置までいく
特に2〜3で戻るときが重要です。
力を抜かずにインナーマッスルでチューブをコントロールするイメージを持って元の位置に戻るようにしてください。
また、上の写真のように肘の位置が低すぎると、刺激が入りにくくなるので、肘の高さを注意するようにしてください。
チューブ外旋トレーニングの回数目安
20回×3セット
内旋トレーニング
このトレーニングはダンベルもしくは重りバンド(2〜4kg)が必要です。
- 肘を肩より少し高い位置において仰向けで寝ます。手にダンベルもしくは重りバンドを持ちます。
- 肘の位置は変えずに手を持ち上げていきます。
- 手が天井向きになるところまで上げます。
- ゆっくり元の位置に戻します。
内旋トレーニングは肩が前に出ないようにしよう
- 左手は軽く肩の前に置き、右手を動かすときに腕の付け根が天井方向に浮いてこないように注意
- 手順1〜3は3秒間、手順3〜5は5秒間かけてゆっくり行う
内旋トレーニングの回数目安
20回×3セット
スピード外旋トレーニング
このトレーニングはチューブかセラバンドが必要です。
- 肘を肩より少し低い位置にしてテーブルの上に乗せます。両肘を体の正面におきます。
手のひらを顔向きにしてチューブを持ちます。 - 両手を同じ力で外に引っ張ります。そのとき両肘は動かないようにします。
- ゴムの張力でもとの位置に戻ります。
スピード外旋は速く正確にやろう
- 途中で止めることなく連続でなるべく速くやる
- 外側に引っ張ったときのゴムの張力で最初の位置に戻る(持ったときの張り加減を調整)
- 肘の位置は変わらない
スピード外旋トレーニングの回数目安
40回×3セット
40回やって肩甲骨と肩の上あたりが少し熱い感じやダルい感覚があればOKです!!
まとめ
ピッチング中にインナーマッスルは腕の動きを安定させるために活躍しています。
インナーマッスルが正しく使えていないと
- 腕の力が効率よく伝わらず、パフォーマンス低下につながる可能性がある
- 腕の付け根が色んな方向に動いてしまい、ケガのリスクが高くなる
というデメリットが出てきます。
インナーマッスルは繊細な筋肉なので、
正しいフォームで集中してやらないとアウターマッスルしか働かず、効果が出ません。
今回紹介したメニューの正しいやり方を理解してトレーニングするようにしましょう!!
Reference
1)基礎運動学.医歯薬出版.2008.pp215
2) 投球動作における肩甲骨周囲筋群の筋活動特性. スポーツ科学研究.8.2011.166-175
3) 投球動作における肩関節周囲筋筋電図の連続時系列変化に関する分析.理学療法学.32(3).2005.115-122
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