ピッチャーにアイシングは必要or不要?アイシングの意外な功罪
「アイシングってやった方がいいですか?」
という質問をよくされます。
アイシングって昔から当たり前のようにしているのでその効果を深く考えることなんとなくしている方が多いのではないでしょうか?
私自身も選手のときはコーチにいわれるがままにアイシングをしていた記憶があります。
しかし、最近ではアイシングの有効性を否定する声も聞かれるようになっています。
今回は
- アイシングは効果があるのか
- 日本とアメリカでのアイシングの違い
- アイシングの危険性
このあたりについて話をしていきますので、自分自身の体をケアする上での参考にしていただければと思います。
この記事の目次
アイシングのあれこれ
そもそもアイシングって何?

アイシングは捻挫や打撲、肉離れなどのケガをした際に行う基本的な処置(RICE処置)に含まれています。
ちなみにこのRICE処置は
- Rest(休息→無理せずに安静に)
- Icing(アイシング→痛めた箇所を冷やしましょう)
- Compression(圧迫→痛めた箇所を圧迫しましょう)
- Elevation(挙上→痛めた箇所を心臓よりも高く上げましょう)
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/athletic_injury.htmlを参考
の頭文字をとったものでケガをした直後はまずこれらのケアをしましょう。といわれてきました。
1978年にアメリカのドクターがこの処置方法を提唱したのが始まりだそうなので、かなり古くから行われている処置方法になります。
アイシングって効果あるの?
ではアイシングは科学的にみて効果があるのでしょうか?
ある有名な海外のドクターは
「アイシングは痛めた箇所の腫れを引かせて痛みを減らすことはできるが、筋肉の損傷自体の回復を早めるものではない」
という見解だそうです。
アイシングをすることで痛みを減らすことができる1)
また、患部の痛みを感じにくくなる(痛みを脳まで伝える神経の活動が鈍くなり、また痛みを感知するセンサーも鈍くなるため)ということはよくいわれています。
しかし、国内・外のいろいろな研究論文を探してみましたが、アイシングをすることでケガの治り自体が早くなったというデータはありませんでした。
ピッチャーのアイシング
次に、ピッチャーにとってアイシングが有効なのかもう少し掘り下げて見ていきましょう。
ケアとしてのアイシング
冒頭で捻挫・打撲などの応急処置としてのアイシングについて簡単に紹介しましたが、ピッチャーが行うアイシングは少し意味合いが違うと思います。
車に例えるとすると
- 車を運転していて急に故障して車が動くように修理する
- 長い距離の運転した後に故障しないようにメンテナンスをする
ピッチャーのアイシングは後者のイメージに近いと思います。
つまり、ケアとしてのアイシングになります。
実際に
普段アイシングをしている高校生ピッチャーのうち、約70%の選手が痛みを予防するためにアイシングを行っている3)
というデータも出ています。
ピッチャーのアイシング効果
足首の捻挫をした後に応急処置として行うアイシングの効果については研究データがあるのですが、コンディショニングとして行うアイシング、特に肩・肘へのアイシング効果については科学的根拠がないのが実情といえます。
そのため、
「アイシングはやりましょう」
とも
「アイシングは必要ない」
のどちらかに言い切ることはなかなか難しいのです。
メジャーリーガーはアイシングしない?

少し話が変わりますが、野球の本場アメリカでは現在アイシングはほとんど行われていないようです。
ミネソタツインズに所属しているトレーナーさんによると
2018年シーズンで登板後にアイシングする投手は0だった2)
http://www.medicalonline.jp/journal/info?GoodsID=an4spmee%2F2019%2F003102%2F005&name=0036-0037jより引用
そうです。
以前はメジャーリーグでも登板後にアイシングをするのが主流だったみたいです。
しかし、データ重視のメジャーリーグではアイシングをすることでケガが減ったというデータが出なかったことから、少しずつ投球後のケアとしてアイシングが利用されなくなってきたのかもしれません。
日本のピッチャーはアイシング好き?
その一方、日本では現在もアイシングが広く行われています。
高校野球のピッチャーでは97名中82名で全体の84.5%もの選手がアイシングをしている3)
という報告もあるくらいです。
アイシングをしている投手の中で効果を実感している割合は
- 肘の痛みが予防されている→69.2%
- 投球後の肘の張りを解消されている→66.7%
- 翌日の疲労対策になっている→65.9%
このように
7割近い選手がアイシングの効果を体感しているようです。
アイシングのデメリット
次に、アイシングのデメリットについてお話しします。
アイシングのよくない点は痛みを感じにくくなる点だといえます。
痛みを感じにくくなるというのは、一見いいように感じるかもしれません。
しかし、見方を変えると
もし肩や肘に重大なケガを抱えていたとしても投球の後にアイシングを行うことでその痛みの感覚が薄れてしまい、その後も続けて投げることができてしまう可能性がある
ということです。
これって実はとても怖いことです。
なぜなら、痛みは
「それ以上やるとやばいですよ」
という体から発信される重要なサインだからです。
アイシングをすることによってそのサインに気づくことができずに練習を続けてしまうと、痛めている箇所をさらに傷つけてしまい、知らないうちに重症化してしまう危険性があるといえます。
こんなデータがあります。
肘が痛くなったピッチャーに肘の痛みを「徐々」に感じるようになった4)か聞いたところ
- アイシングをしている選手→85%
- アイシングをしていない選手→37%
でした。
普段アイシングをしているかどうかで痛みの感じ方に大きな差が出るようです。
習慣的にアイシングをしている選手は、肘の痛みを感じにくくなり、ケガをしていることを実感しにくかったことが1つの要因でしょう。
また、
痛みを感じて「1週間以上経過」してから受診をした選手の割合はアイシングをしている選手は64%であったのに対してアイシングをしてない選手では41%4)とかなり少なかった
ともいわれています。
アイシングをすることで痛みを感じにくくなるがゆえに、ズルズル練習を続けて病院に行くのが遅くなってしまい、気づいた頃には重症になっていたという危険性があります。
肩や肘にアイシングをすることで明らかなコンディショニング効果があるのであれば、アイシングを強くオススメします。
しかし、アイシングの効果が結果的に逆効果につながってしまうかもしれないと考えると、アイシングを行うことはせず、肩・肘にかかる負担を減らすための投球フォームの矯正や全身の柔軟性を高めるなどしてケガへのリスクを抑えることに注力するべきだと思います。
まとめ
ピッチャーがピッチング後のアイシングが明らかな効果があるということが科学的に証明されていません。
痛みが抜けにくくなるという一見メリットにみえるアイシング効果が逆にケガを悪化させる危険性もあります。
そのため、投球フォームの矯正や全身の柔軟性向上などを行い、肩・肘にかかる負担を減らすようするのがいいでしょう。
Reference
1)Does Cryotherapy Improve Outcomes With Soft Tissue Injury?J Athl Train. 2004 39(3):278–279.
2)アメリカ, ヨーロッパではどうなのか – 野球 (MLB) とサッカーの例から RICEと創傷処置について オーバートレーニング?それともアンダーリカバリー? スポーツメディスン.2019 31(2):36-37.
3) 高校野球の現場におけるアイシング実施の問題点 高校野球選手のアイシングに対する目的とその効果に関する実態調査.野球科学研究.2019 3:1-10.
4) 成長期内側野球肘の受診行動調査.日本臨床スポーツ医学会.2013 21(2): 403-408.
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