【リリースポイントの高さ】を決めるのはココ!フォーム矯正の重要ポイント

ピッチャーフォーム

リリースポイントの高さは

「腕の位置」で決まる

と思われる方が多いと思います。


しかし、実はリリースの位置を決めているのは腕ではなく、ある場所がポイントとなって腕の高さを調整しています。

  • 腕の高さを変えてフォーム修正したい
  • 高い位置からボールをリリースしたい
  • バックスピンが効いたストレートを投げたい

このような選手はこの記事を参考にして効率よくパフォーマンスをアップさせるヒントにしてください。

投球フォーム(投法)の種類

オーバースローから少し腕の位置を下げてサイド気味で投げよう」


こんな感じでフォーム矯正するときに腕の高さを下げて調整しようとしたことありませんか?


そのやり方では無理やりなフォーム修正となり、フォームが崩れたり、肩関節などにかかる負担が大きくなり、ケガのリスクが高くなる危険性がとても高くなってしまいます。


今回、その理由と理想的なリリースポイントをつかむためのポイントについて話していきます。


ですが、その前に投球フォームの種類について簡単に紹介しておきます。

投球フォーム(投法)は一般的に下の4種類に分けられます。

  • オーバースロー
  • スリークォーター
  • サイドスロー
  • アンダースロー

この分類はボールがリリースされた瞬間の腕の位置で決まります。


読んで字のごとくサイドスローは腕の位置が真横にあり、アンダースローは腕が水平ラインよりも低い位置でリリースされる投法になります。

スリークォーターは3/4なのでオーバースローよりも少し低い位置となります。

解釈に注意しなければいけないのがオーバースローです。


オーバーと名前がつくように、リリースポイントでの腕の位置は頭より高くなります。


しかし、バンザイをするように腕自体を高く上げてから投げおろしているわけではありません。


「腕が下がってきているぞ!」


こんなことを言われて腕を頑張って高く上げてリリースポイントを調整しようとする投手がいますが、かえってフォームが崩れてしまう可能性があります。(純粋に腕の上げ具合が小さくなっている場合もあります)

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投球フォーム(投法)の違いはこのポイントで決まる

では、なぜオーバースローのピッチャーはリリースポイントで腕の位置が高く見えるのでしょうか。

腕の角度はどのフォームでもほとんど同じ?

腕を純粋にどのくらい高く上げているかは体幹に対する腕の角度で計測します。


【体幹に対する】
というのがポイントです。


腕を身体の横に下げた状態では腕の角度は0度で横から開いていき、バンザイまでしたときは180度となります。


オーバースローではリリースポイントの位置が高いので、このバンザイ角度が180度に近く、反対にアンダースローではこの数値が小さくなると思われる方が多いと思います。


しかし、実はどの投法でもこの角度に大きな違いはなく、だいたい90°〜100°に収まっています。


下の写真をみてください。

オーバースローのリリースポイントについての解説

オーバースローのピッチャーなのですが、体幹の軸(赤色の縦線)と腕の軸(赤色の斜め線)の二つの直線を使い、先ほど説明した純粋に腕をどのくらい腕を上げているのか分かるバンザイ角度をみてみましょう。


もしバンザイ角度が180度に近ければ、2つの赤い線がほぼ一直線になりますがどうでしょうか?


大体100度くらいになっていますよね。


オーバースローであっても腕自体はバンザイするほど高く上げているわけではないのです。

腕の位置を決めているのはどこなの?

では、なぜオーバースローでは腕の位置が高くなるのでしょうか?


さきほどの写真をもう一度見てみましょう。

ピッチャーのリリースポイントは体幹の傾きで決まる

体幹の軸を見てみると地面に対して垂直ではなく、斜めになっているのが分かるかと思います。


この体幹の傾きが今回のお話の最重要ポイントです。

ポイント

オーバースローのピッチャーは左肩を下げて体幹を1塁側の方向(左投手では3塁側)に傾けることでリリースポイントで腕の位置を高くしている


言っていることがわからないんだけど・・・という方は以下の動きをしてみてください。

やり方はコレ
  1. まず右腕を真横に開きます
  2. 肘が肩よりも少し高い位置になるところまで腕を開いてください
  3. その位置から右腕は動かさずに左肩を下げるようにして体幹を真横に倒してください

この動きをすると腕自体は動かさなくても、腕の位置は高くなりますよね。

これが、オーバースローで腕の位置が高くなるカラクリです。


つまり、オーバースローの投手は体幹の傾きを使ってリリースポイントを調整しているのです。


これが、サイドスローの場合は体幹の傾きがほとんどなく、アンダースローではオーバースローと反対に3塁側の方向に体幹を傾けることで腕の位置を低くして投球しています。


話が少しそれますが、バレーボールのアタックはオーバースローのような体幹の傾きが少なく、腕自体を高く上げて動作を行っています。

バンザイ角度が大きいのがアタック動作でピッチングとは異なる体の使い方になります。

オーバースローのピッチャーでは、体幹を平均21°〜29.5°1塁側に傾けて投げている

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29090988/より引用

というデータもあり、ピッチング動作での体幹の傾きはとても重要だといえるでしょう。

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ピッチング動作における体幹の傾きの重要性について

ここまで体幹を傾けることでリリースポイントを調整しているということについて話していきます。

ここからは投球フォーム中の体幹の傾きがいかに重要な役割をしているのかについて少し掘り下げて説明していきます。

「両肩を平行にして投げる」は正しいの?

「両肩をまっすぐ平行にして投げましょう」

昔からよく聞く指導法だと思います。僕自身もスポ小ではそうやって習いました。


しかし、先ほど説明したようにオーバースローの場合、リリースポイントで腕の位置を高くしているのは体幹の傾きによるものです。

それなのに、両肩を平行にしたまま投げようとするとどうなるでしょうか?


体重移動のときは両肩が平行のままで大丈夫なのですが、リリースの瞬間まで両肩を平行にキープしたままだと体幹の傾きを作ることができず、腕の位置を高くすることはできません。


両肩を平行にしたまま、上から投げようとすると、体幹の傾きがないサイドスローの回転軸なのに、腕だけを強引に上に引き上げて投げることになってしまいます。


そうなってしまうと、体幹の傾きを有効活用した回転運動を行うことできず、スピードボールを投げにくくなるだけでなく、肩関節を酷使することになり、ケガのリスクも高まってしまいます。

ポイント

両肩は「平行」ではなく、左肩を下げて体幹を「傾ける」ことでリリースポイントを高くする

体幹に対する腕の角度のズレはケガにつながりやすい?

腕だけを無理やり持ち上げて投げるのはケガのリスクが高まるという話をしましたが、投球バイオメカニクスの研究でも

リリースポイントでバンザイ角度(肩関節外転)が100度以上だと関節にかかる負担が大きくなる2)

https://www.researchgate.net/publication/292417674_Optimal_Shoulder_Abduction_Angles_during_Baseball_Pitching_from_Maximal_Wrist_Velocity_and_Minimal_Kinetics_Viewpointsより引用

というデータが出ています。


ケガを予防するうえでも体幹に対する腕の高さをチェックする必要がありますね。


実際に色々な投手のリハビリやトレー二ング指導を担当する中でバンザイ角度が100度を超えている選手ではSLAP(superior labrum anterior and posterior lesion)損傷といわれる野球肩になりやすい印象があるので注意が必要です。


野球肩で悩んでいる選手はバンザイ角度が大きくなりすぎていないか確認してみましょう。

体幹の角度は投球パフォーマンスにも影響する

体幹の傾き角度はパフォーマンスにも影響するといわれています。

体幹の傾きが大きい選手とそうでない選手でストレートの球速を比較したところ、体幹の傾きが大きい投手の方が球速が速かった3)

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23884305/より引用

このような結果になった要因として、体幹の傾きが大きいことで

  • リリースポイントで指が地面に対してより垂直に近づき、きれいなバックスピンがかかる(回転数が上がりやすい)
  • ステップした左足に体重がかかりやすくなり、下半身の力をボールに伝えやすい
  • 左足に体重が乗りやすくなることで胸の張りが出やすくなり、全身のしなりが生まれやすい
  • 左足に体重が乗りやすくなることで回転運動をスムーズに行いやすい

などが考えられます。


回転数を上げるためには体幹の傾きだけでなく、指のトレーニングが必要不可欠になります。

ピッチング中の細かい指の動きや自宅でできるトレーニング法については下の記事でまとめていますので、ぜひご覧ください。

体幹の傾きを作るにはどうすればいいのか

体幹の傾きを意識して体幹を倒して投球フォームを修正しようとすると、開きが早くなり、フォームが崩れてしまう可能性が非常に高いのでオススメしません。


フォームを崩すことなく体幹の傾きを作るために重要になるのが【左手の使い方】です。


体幹の傾きはステップ足が着地した後のリリースに向かう回転運動で行われますが、その動きのガイド役をしてくれるのが左手(グラブの使い方)です。


左手をうまく使うことによって体幹の回転運動と傾きをスムーズに引き出すことができます。

体幹を意識的に傾けるのではなく、爆発的な回転運動に導いてくれる左手の使い方を習得することが大切になります。


左手の使い方は下の記事で細かく話していますので、そちらをご覧ください。

リリースポイントをチェックしてみよう

最後に、投球フォームを簡単にチェックする方法を紹介します。


キャチャー方向からリリースポイントの瞬間を撮影したものを用意してください。

チェック方法は以下の通りです。

①バンザイ角度(体幹に対する腕の角度)をチェック
<要注意選手>
・90度以下の選手(腕の上がりが弱い選手)
開きが早くなりやすく、全身のしなりも浅くなりやすいので球速が出にくい
・100度以上の選手(体幹の傾きが小さいか腕だけで無理やり上げている)
肩に負担がかかりやすい

②地面に対する体幹の傾き角度をチェック

<目安>
・オーバースローであれば20度〜30度程度

以上です。

普段なかなかチェックしない部分だと思うので、ぜひやってみてくださいね。

まとめ

リリースポイントを決定するのは腕自体の角度ではなく、体幹の傾き具合によります。

オーバースローの場合、体幹の傾きはリリースポイントだけでなく、以下の点で重要になります。

  • きれいなバックスピンが効いたストレートを投げやすくなる
  • 球速が上がりやすくなる
  • 体幹の傾きが小さく、腕を無理やり上げて投球していると、肩に負担がかかりやすくなる

体幹の動きはパフォーマンス・ケガ予防の両方の観点から大切だといえます。


フォーム修正するときに、体幹を傾けようと意識しすぎると、開きが早くなり、フォームを崩す危険性がとても高いので注意が必要です。

左手の使い方を見直すことでスムーズに体幹の動きを誘導することができるので、左手(グラブ)の正しい使い方をマスターするようにしましょう。

Reference

1)Youth Baseball Pitching Mechanics:A Systematic Review.Sports Health.2018 10(2):133-140.

2)Optimal Shoulder Abduction Angles during Baseball Pitching from Maximal Wrist Velocity and Minimal Kinetics Viewpoints.Journal of applied biomechanics.2002 18(4):306-320.

3)Effect of excessive contralateral trunk tilt on pitching biomechanics and performance in high school baseball pitchers.Am J Sports Med.2013 41(10):2430-8.