【回転数】を上げるための指トレーニング ピッチングの指の動きについて知ろう!
ピッチャーが回転数を上げるためには指の力を全てボールに伝える必要があります。
この記事ではピッチング中に指がどのような動きをしているのか、また回転数を上げるために必要な指トレーニングについて紹介しています。
最近はピッチャーのパフォーマンスをはかるものさしとして球速だけでなく、「回転数」が注目されています。
プロ野球中継でも回転数が出るようになっていますよね。
ストレートの回転数が多いとホップ成分が大きくなり、ノビのあるボールを投げることができます。
今回は回転数を高めるために重要な指が具体的にピッチングでどのような動きをしているのかまたそのトレーニング方法について紹介していきます。
芹田祐(セリタタスク)
理学療法士として整形外科病院・整形外科クリニックなどに10年ほど勤務。野球現場では小学生からプロ野球まで幅広い年代の選手に対して述べ1000名以上のリハビリテーション・トレーニング指導経験あり。
保有資格
理学療法士/認定理学療法士/JARTA認定トレーナー/国際認定シュロスセラピスト/修士(医科学)
この記事の目次
パフォーマンスのものさし「回転数」
まず、最近よく聞かれるピッチングの回転数とはどのようなものか簡単に紹介します。
回転数って何?
投手のパフォーマンスを回転数で表すことが多くなっています。
メジャーリーグではトラックシステムという機器を使ってピッチャーが投げるボールの回転数を計測し、その結果を公表してランキング化されたりしています。
回転数は1分当たりのボール回転数で表されること多いのですが、回転数が多いとリリースした直後の速度(初速)と終速の差が小さくなるためにバッター目線では球速以上に速く感じて打ちづらいボールになります。
例えば、回転数が2000であれば1分間で2000回転回るボールを投げているといことになります。
一般的に球速が速いピッチャーほど回転数が多いのですが、中には球速の割に回転数が多いピッチャーもいます。
その代表的な選手が巨人やメジャーリーグで活躍した上原浩治投手です。
メジャー投手の平均が2200回転と言われていますが、上原投手は球速が140km/hほどなのに、回転数は約2700回転でメジャーでもトップクラスの数値でした。
ダルビッシュ投手の回転数が2485回転でMLB投手199名中の8位だったというデータもありますが、上原投手の2700回転がいかにすごいかわかりますね。
ホップするストレート?マグヌス効果について
回転数が高くなると、バッターからはボールがホップするように見えるという大きなメリットがあります。
本当にボールが浮き上がっているわけではなく、回転数が高いことでボールが沈みにくくなりそれがバッター目線では浮いて見えるようです。
その原理にボールに働く「マグヌス効果」が影響しています。
簡単に説明させていただきます。
上の図は投げたボールがバッター方向に向かって進んでいるものです。
図の右側が投手方向で反対に図の左側がバッター方向です。
赤色がボールの回転方向でストレートのバックスピンがかかっています。空気中のボールはバックスピンの回転している方向に空気(青矢印の方向)が引きずられます。
ストレートではボールの上側の空気の速度が下側より速くなります。
そしてこのスピードが速いほどボールに対する圧力が小さくなり(ベルヌーイの定理といいます)、
その圧力の差によってボールに上向きの力(揚力)つまりホップする力が働くようになります。
この力が大きいほどノビのあるストレートを投げることができます。
全盛期の阪神藤川投手は火の玉ボールといわれてテレビでもホップしているように見えてバッターもストレートがくるとわかっていても空振りすることが多かったですが、それはきれいなバックスピンがかかってボールに生じているホップ量が大きいためです。
それだけピッチャーにとって回転量を上げることが重要だといえます。
合わせて知っておきたい回転軸
回転数が高くてもボールが回転している軸が斜めになっていると、きれいなバックスピンがかかりにくくなり、ストレートの威力が半減してしまいます。
きれいなバックスピンをかけるためには指の使い方だけでなく、体幹の動きがとても重要です。
この体幹の動きについては下の記事で解説してますので、参考にしていただければと思います。
回転数を上げるためには?
ではピッチャーが回転数を上げるためにはどうすればいいのか解説していきます。
ピッチング中の手首の動き
手首はスナップの動きをしますが、ピッチャーのパフォーマンスを上げるためにとても重要です。
上の写真はリリース直前からリリース後にかけての手の動きですが、一緒にみてみましょう。
ちょうど写真の真ん中あたりですが、リリース前に手首が大きく甲側に折れてくるのがわかるかと思います。
そこからリリースに近づくと甲側に折れていた手首がまっすぐの方向に戻っていきます。
最終的にリリースするときにボールに力を伝えるのは指先なので、手首のスナップはその力を指までつなげる橋渡しのような役割をしています。
手首→指先への連動
さきほど説明したように手首は甲側に倒れていたものがまっすぐの方向に動きますが、その動きによって手の中にあるボールは指先に向かって転がるように動きます。
「ボールを強く握らなようにしましょう」
という指導はシンプルで当たり前のように思うかもしれないですが、とても大切なことです。
ガチガチにボール握った状態では、手首のスナップを使っても
手の中でボールが転がらず、指先で力強いリリースをすることはできません。
リリース直前に手首の切り返しから指先のリリースと連動して動いている瞬間の動きは下のスローモーション動画がとても参考になります。
海外の野球サイトですが、ページの真ん中くらいに「Fastball」と書いてある箇所がありますのでそちらを参考にしてください。
https://www.drivelinebaseball.com/2016/11/spin-rate-part-ii-spin-axis-useful-spin/
ピッチング中の指の動き
次に、指の動きについてお話します。
手首でスナップをきかせることでボールが指先方向に転がるということを説明しましたが、そのときの力によって指に少し反り返る動きが出ます。
その後にまた指を曲げる方向(ひっかく方向)に力を入れてボールをリリースします。
少しややこしいと思うので、さきほどのリリース前後の白黒写真をもう一度みてみましょう!
一番最後から3番目と4番目の指の角度をみると4番目で反り返った指が3番目では切り返すように力を入れて曲がってきています。
ゴムをいっぱい伸ばして一瞬で離すと遠くまで飛んでいきます。
ピッチング中の指の動きも一緒です。
一回伸ばされる方向に動いた指が一瞬で力を入れて曲がることでボールに力強いスピンをかけることができて回転数も高くなりやすいです。
指が反ったところから指を曲げてリリースするまでに指にある関節の動く範囲が大きいピッチャーは回転数が多かった1)というデータもあります。
ちなみに、最近は特別な研究機材を使わなくも回転数・回転軸をグラウンドで簡単に計測できるようになりました。
指の細かい動きについてですが、反り返るのは人差し指と中指の第1関節と第2関節になります。
第3関節は指がグラグラにならないように固定の役割をしてくれています。
回転数を上げるための指トレーニング
それでは実際に行うトレーニング方法について説明します。
ボールを持って手首との連動性を高めることに重点をおいて強化します。
<トレーニング1>
①反対の手でボールを支える
②手首を甲側に倒した位置を作る
③②の状態からスナップをきかせて手首をまっすぐの方向に戻す。 そのときに反対の手でボールを指先方向に転がし指が反る方向に押す
50回×3セット
- 人差し指と中指は反る方向に動かしますが、力に負けず固めるイメージで。第三関節が反らないに注意する
- 慣れてきたら反対の手でボールを強く押して指を反る方向に動かす
次に、指先で弾く練習をします。
<トレーニング2>
①指でボールを切るようにして一瞬でリリースする
②人差指びと中指の1〜2関節でボールを押し返す
③反対の手は力比べをするようにしてボールを介して指が反る方向に力を入れる
30回3セット
この動きを連続で行うようにしましょう。
※指で切ったボールが上方向に動いてしまう場合は力が抜けています。最後まで指先に力を入れてボールを押すようにしてやってみましょう。
指の筋肉は肘からついているので肘の内側や前腕が疲れていればOKです!
トレーニングギアを使ってもっと効率よく指を強化したい方には下の器具がおすすめです。
以前帯同チームに導入してピッチャー陣の回転数が軒並み上がっていました。
参考までに。
やることはとても単純ですが、
原理を理解してトレーニングするのと何かも考えずにやるのではトレーニング効果に大きな差が出てしまいます。
ピッチング中の指の動きをイメージしながら取り組むようにしましょう。
ピッチング中の指の動きを理解して回転数を上げよう
ピッチャーのパフォーマンスを高めるためには回転数を上げることがとても大切です。
ピッチング中は手首のスナップをきかせ、直後にその動きに連動して指が動くことでリリースの瞬間に力強くボールを弾くことができるようになります。
トレーニング内容はとてもシンプルですが、ピッチング中の手首・指両方の動きをきちんと理解したうえで取り組むようにしましょう。
Reference
1)女子プロ野球選手における投球時の手指動作がボール速度およびボール回転数におよぼす影響.スポーツパフォーマンス研究9.2017.288-297.
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