【球界トレンド】プロ野球の育成契約とは?詳しい仕組みと「育成成り上がり選手」を紹介

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この記事のまとめ

最近のプロ野球ドラフトでは多くの育成選手が指名されます。育成選手は通常の支配下指名とは契約内容が大きく異なります。この記事では育成契約の仕組みと育成契約から1軍で活躍するサクセスストーリーを歩んだ選手を紹介しています。

育成契約って普通の契約と何が違うの?

ここ数年はプロ野球のドラフトで育成選手が指名されることが多くなりました。

例えば、2020年に巨人は合計12名もの選手を育成指名しました。


育成選手という言葉は聞きなれたかもしれませんが、育成契約が具体的にどのようなものかを知っている方は少ないと思います。

今回はプロ野球の育成契約について野球ファン初心者でも分かるように丁寧に解説していきます。

この記事でわかること
  • 育成契約の仕組み
  • 育成指名される選手の特徴
  • 育成からはい上がったプロ野球選手5名

育成契約とは

育成契約とはその名の通り「育成」をメインとした契約です。

育成選手制度は2005年に開始されて現在は多くの球団が育成契約を行っています。


育成契約は通常の支配下登録とは違うため、球団側は単純に契約選手を増やせるというメリットがあります。


もちろん選手側からしても通常のドラフトでは指名されない選手でも、プロ野球球団と契約を結べるので球団・選手ともにメリットがあります。


通常のドラフトは1位から各球団が指名を行って交渉権を獲得します。


育成契約はこの通常ドラフトが終了した後に行われていきます。

この際も通常のドラフトと同じように各球団が育成契約の1位から選手を指名していきます。

育成指名をしない球団もあるよ

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各球団の育成指名人数(2018〜2020)

2018年から2020年までの3年間でプロ野球12球団の育成指名選手数はこちらです。

201820192020合計
巨人421218
中日0134
阪神1214
横浜1023
広島1315
ヤクルト2046
ソフト47819
ロッテ1247
西武3159
楽天2417
日ハム1326
オリ18615
  • ソフトバンク 19名
  • 巨人     18名
  • オリックス  15名 

ソフトバンク・巨人・オリックスの順で多いです。

  • 横浜     3名
  • 中日     4名
  • 阪神     4名

一方、横浜は3名・中日・阪神は4名です。

球団の方針によって指名選手の数に大きな差があります。

育成指名から球団方針がみえるよ

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育成契約になる選手の特徴

育成指名される選手の特徴
  1. ドラフト時点で実力が足りない選手
  2. けがをしている選手
  3. ポジション変更して使ってみたい選手

ドラフトで育成指名される選手には3つの特徴があります。

ドラフト時点で実力が足りない選手

野球選手の才能が開花する時期はさまざまです。

高校卒業からすぐに活躍する選手もいる一方で30歳を超えてから活躍する選手もいます。


ドラフト時点では即戦力でなくても、プロの恵まれた環境で数年練習したら良い選手になれる「素材型」の選手はたくさんいます。


育成契約は将来を見越しての契約方法といっていいでしょう。

光る才能がないと育成指名されないよ

2.けがをしている選手

  • ドラフト時点で大きなケガがある選手
  • 長い期間ケガをしていて実践から離れている選手
  • 大きなケガをして長期離脱になる支配下選手

このような選手はケガが完治するかわからないというデメリットがあります。

また、そういった選手を獲得しても、すぐに起用することは不可能です。

じっくり治して数年後の活躍を期待!!

そのため1~2年ほど様子を見るために育成契約をするというパターンがあります。

また、最近はケガをした支配下選手が育成選手として再契約するケースも増えています。

3.今までと別のポジションで使ってみたい選手

  • 学生時代は投手だったけど、野手として獲得したい
  • ピッチャーとしては大けがをして厳しいけど身体能力を買って野手として育ててみたい

このような選手にも育成契約が打診されることが多いです。

投手から野手にコンバートされて大活躍をした選手は意外と多いです。

そういった可能性を秘めている選手を獲得できるのは育成契約のメリットといえるでしょう。

支配下登録とは

支配下登録とはプロ野球球団と選手の間で独占的に契約を結べる状態であることをいいます。

通常のドラフトで指名された選手は支配下登録されますが、育成契約とは待遇が異なります。

通常指名=支配下登録

例えば、支配下登録をされないと1軍で試合に出れません。

そのため育成契約選手は支配下登録をされることを目指して実績を重ねていきます。

育成選手と支配下選手の違い

育成契約の特徴
  1. 背番号が3桁
  2. 一軍の試合に出場不可
  3. 契約期間は最長3年
  4. 二軍で試合に出られる人数が固定
  5. 人的補償の対象外

支配下選手と比べて育成契約だけにある特徴はこの5つです。

1.背番号が3桁

背番号の違い
  • 支配下登録選手
    1桁or2桁
  • 育成選手
    3桁

支配下登録選手は背番号が2桁以下で育成選手は3桁と決まっています。

2軍の試合で背番号3桁の選手がいれば、育成選手と判断ができます。


しかし、1点注意点があります。

コーチは2桁でも3桁でも背番号登録ができます。

背番号3桁の選手全員が育成選手というわけではないので注意しましょう。

2.一軍の試合に出られない

全てのプロ野球選手の目標は1軍の試合に出場して活躍することでしょう。

しかし、育成選手はあくまで「育成」の目的で球団が獲得しているので1軍の試合に出場することはできません。


そのため、育成選手の第一目標はとにかく支配下登録されるということになります。

3.契約期間は最長3年

支配下登録の選手には契約の期間は設けられていません。

育成契約には最長3年という期限があります。


その間に支配下登録をされないと自由契約です。


育成契約は選手のポテンシャルを期待して行う契約です。

ポテンシャルを持っている野球選手はたくさんいます。

契約の一定期間を決めておかないとプロで活躍できないまま長年所属することになり、選手の人生を大きく変えてしまいかねません。


3年の間に結果を出すのはシビアかもしれませんが、育成選手から活躍できる人は本当に一握りです。

厳しい世界だ・・・

期間を決めて選手に「プロ野球選手としては難しい」と判断させるのも球団の仕事です。

選手の人生を守るためにも3年という契約期間が設けられているのが育成契約の特徴です。

4.二軍で試合に出られる人数が決まっている

育成選手は1軍で試合に出ることができないため、主に2軍・3軍で実績を積むことになります。

しかし、2軍の試合でも育成選手は5名までしか出場できないというルールがあります。

3軍で実践経験を積ませるチームもあるよ

2軍の試合は支配下登録されている選手も出場しています。

そのため、育成選手はチーム内の生き残りサバイバルを通過しないと試合に出場できません。

5.人的補償の対象にならない

人的補償という言葉を聞いたことはないでしょうか?

これは獲得した選手がAクラス・Bクラスの場合は獲得先球団から選手をもらえるという制度です。


人的補償の対象は支配下登録選手に限定されています。

つまり育成選手を人的補償として獲得することができません。


近年、育成選手が人的補償外というルールの裏を突いて有望な若手を故意に育成契約にするケースも見られています。

現行のルール上は問題ありませんが、将来的にルールが改変される可能性があります。


人的補償については下の記事でくわしく解説しているのでそちらを参考にしてみてください。

育成選手の給料

育成選手は支配下登録選手と比べると待遇がかなり厳しいです。

これから具体的に育成選手の待遇について解説していきます。

育成選手の年俸

育成選手の最低年俸は240万円となっています。

240万円を12か月で割ると1か月約20万円です。

プロ野球選手としてはかなり低額の金額が設定されています。

育成契約の上限はないため、制度上は2000万でも3000万でも年俸を設定することができますが育成選手に大金を出す球団はありません。(大金を出すほどの実力があれば支配下登録をするため)

育成選手の契約金

プロ野球選手の通常指名では契約金が球団から選手に支払われます。


ドラフト1位の選手だと「契約金1億!」のように多額の契約金が動きます。


しかし、育成契約では契約金が支払われません。

その代わりに支度金というものが支払われます。

支度金の金額は決まっていて300万円となっています。

育成選手から活躍した選手

育成選手から一流選手になっている人もいます。一例として以下の選手があげられます。

  • 山口鉄也選手
  • 松本晢也選手
  • 千賀滉大選手
  • 甲斐拓也選手
  • 国吉佑樹選手

他にもたくさんいるよ

簡単に経歴を紹介します。

1.山口鉄也選手(元巨人)

プロフィール
  • 元巨人
  • 2005年の育成ドラフト1巡目
  • 支配下登録=2007年
  • 巨人黄金期を支えた中継ぎ投手

経歴

  • 2008年に67試合登板して新人王を獲得
  • 9年連続60試合出場した「鉄人」
  • 育成出身で初の1億円プレイヤー
  • 歴代最多ホールド記録保持者

育成出身から大活躍した代表的な選手です。

2.松本哲也選手(元巨人)

プロフィール
  • 元巨人
  • 2006年の育成ドラフト3巡目
  • 支配下登録=2007年
  • 俊足巧打の外野手

経歴

  • 2008年に1軍デビュー
  • 2009年は129試合に出場
  • 2009年は打率.293をマーク
  • 育成出身の野手初の新人王

2017年の引退まで小柄ながら俊足を生かして活躍しました。

3.千賀滉大選手(ソフトバンク)

プロフィール
  • 2010年の育成ドラフト4巡目
  • 支配下登録=2012年

経歴

  • 2016年に12勝3負
  • 2016年から5年連続二桁勝利
  • 2017年にWBCで最優秀投手獲得
  • 最多勝(2020)
  • 最優秀防御率(2020)
  • 最多奪三振(2019,2020)

説明不要の有名ピッチャーですね。

ちなみに後述する甲斐拓也選手とは育成出身の同期です。育成出身のバッテリーが1軍で活躍する姿はすべての育成選手に夢を与えています。

4.甲斐拓也選手(ソフトバンク)

プロフィール
  • 2010年の育成ドラフト6巡目
  • 支配下登録=2013年
  • 甲斐キャノンといわれるほど強肩捕手

経歴

  • 2017年にレギュラー定着
  • 2019年にプレミア12に出場
  • ベストナイン(2017,2020)

元々は育成ドラフト6位の選手ですが、日本を代表するキャッチャーに成長しました。

5.国吉佑樹選手(横浜)

プロフィール
  • 2009年の育成ドラフト1巡目
  • 支配下登録=2011年
  • 横浜の本格派投手

経歴

  • 2012年に育成初の完封勝利
  • 2014年に49試合登板
  • 2019年に161km/hを計測

入団当初からポテンシャルを高く評価されていた投手です。

「ハマのダルビッシュ」といわれ2011年に支配下登録されました。

育成契約は困難な道のりだが夢がある

育成選手から一流選手になるには、非常にハードルが高く千賀投手や山口投手は「奇跡のような確率の選手」とも言われているほどです。


しかしプロ野球ファンとしては育成選手から一流選手になるプロセスを応援したいと思うはずです。

将来1軍で活躍する姿を楽しみにして育成選手の奮闘ぶりをチェックするようにしましょう。

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