球速を上げるために【ピッチャーに必要な筋肉】は?投球フォームから紐解いて考えてみよう(軸足の下半身を中心に)
ピッチングでは多くの筋肉が動いていますが、球速を上げるためにとくに重要な筋肉がいくつかあります。
今回、どなたが読んでもわかりやすいように投球フォームの各フェーズごとに下半身の筋肉がどのくらい働いているかについてまとめてました。
この記事でピッチャーにとって必要な筋肉を理解して普段のトレーニングを行うようにしましょう。
ピッチャーにとって下半身の筋肉はパフォーマンスを高めるために最重要といっても過言ではないくらい大切なものです。
例えば、体重移動で最大限加速して球速アップにつなげようと思ったら、おしりの外側にある中殿筋がしっかり動いてくれないとスムーズに加速することはできません。
球速アップのためには下半身強化が絶対的に必要なのです。
しかし、ピッチング中に
- どの筋肉が
- どのタイミングで
- どのくらい活動しているか
これを知っている選手は少ないのではないでしょうか?
ピッチングでどのように筋肉を使っているかを知ることで
- なんのために下半身トレーニングをするのか
- このトレーニングはピッチングにどう活かせるのか
- どの筋肉を鍛えれば、もっといいピッチングができるのか
を理解することができ、高いモチベーションで練習に取り組むことができるようになります。
また、自分の苦手な投球フェーズがあれば、その瞬間に必要な筋肉を知っていると、その部位を集中的に鍛えることで効率よく課題克服につながるかもしれません。
ピッチャーをしている選手は今回の内容は1つの知識として頭に入れておくようにしましょう。
芹田祐(セリタタスク)
理学療法士として整形外科病院・整形外科クリニックなどに10年ほど勤務。野球現場では小学生からプロ野球まで幅広い年代の選手に対して述べ1000名以上のリハビリテーション・トレーニング指導経験あり。
保有資格
理学療法士/認定理学療法士/JARTA認定トレーナー/国際認定シュロスセラピスト/修士(医科学)
この記事の目次
【必要な筋肉】の解釈について
これから、投球フォームの各フェーズごとにどのくらい下半身の筋肉が活動しているかを説明していきます。
ですが、その前にいくつか注意点があるので、まずはそちらに目を通してください。
計測している下半身の筋肉
今回は投球バイオメカニクスの研究データを参考にしてピッチング中のそれぞれのフェーズで軸足の下半身筋肉がどのくらい活動しているのか見ていきたいと思います。
(参考にした文献:Lower extremity muscle activation during baseball pitching)
今回見ていく筋肉は
- 腓腹筋(ふくらはぎ)
- 大腿二頭筋(太もも裏にあるハムストリングス)
- 大殿筋(お尻)
- 大腿直筋(太もも前)
- 内側広筋(太もも前の内側)
の5つになります。
ステップ足で必要な筋肉について
ステップ足と軸足では筋肉の働きぐあいが変わってきます。
ステップ足では下半身の筋肉がどのように活動しているかを知ることでよりトレーニングするのが楽しくなると思います。
踏み出し足で必要な下半身の筋肉については別の記事でまとめていますのでそちらを参考にしてください。
今回の筋肉だけをトレーニングすればいいわけではありません
今回はさきほどあげた5つの筋肉を見ていきますが、当然ですがこれらの筋肉のみを鍛えればOK!というわけではありません。
ピッチング中に5つの筋肉がこれだけ活動していて球速アップに必要なんだなあ。と考えるようにしてください。
表の見方について
これからピッチングの各フェーズごとに表を使って説明しますが、表内に書いてある数字の意味について簡単に説明します。
それぞれの筋肉に力が入りやすい位置で力比べをするようにしてい思い切り力を入れたときの筋肉の活動度合いを100%とします。
そのときと比較してそれぞれの筋肉がどのくらい活動しているかを%であらわしてあります。
数値が高いほどその筋肉がたくさん活動していると思ってもらえればOKです。
投球開始(フェーズ1)での下半身筋肉の活動
1つ目のフェーズは投球開始から左足を高く上げるまでのフェーズでの筋肉の活動を見てましょう。
ここから
ここまでです。
それぞれの筋肉の活動は以下の通りです。
腓腹筋(ふくらはぎ) | 27% |
内側広筋(太もも前) | 15% |
大腿直筋(太もも前) | 10% |
大殿筋(お尻) | 25% |
大腿二頭筋(太もも裏) | 18% |
BASEBALL PITCHING|Journal of Strength and Conditioning Research
このフェーズでは、軸足で片足立ちをしている状態ですが、どの筋肉も活動状態としてはそこまで高くありません。
今回のデータにはありませんが、このフェーズでは片足でバランスをとるためにお尻の外側にある中殿筋が重要です。
ワインドアップでは足を高く上げることでその分の助走が大きなり、球速が上がりやすくなります。
足を高く上げるためには、下半身の筋肉をめいっぱい使って足を力で持ち上げるのではなく、
左足の上げ方と骨盤・背骨の使い方がとても大切になります。
特に、骨盤のコントロールができていないと、スムーズに左足を操作することができず、足を高くあげるのがかなり難しくなります。
ワインドアップで軽く足を高く上げるための3つのコツについて以前の記事でまとめています。
興味がある方はぜひそちらもご覧ください。
【目からウロコ】ピッチャーの足の上げ方の秘訣!左足を高く上げるために重要な3つのコツ
足を上げてからステップ足が着地するまで(フェーズ2)の下半身の筋肉の活動
次は左膝が1番高く上がったところから左足が地面に着地するまでのフェーズです。
体重移動のタイミングですね。
ここから
ここまでです。
筋肉の活動は以下の通りです。
腓腹筋(ふくらはぎ) | 75% |
内側広筋(太もも前) | 68% |
大腿直筋(太もも前) | 38% |
大殿筋(お尻) | 73% |
大腿二頭筋(太もも裏) | 48% |
このフェーズでは軸足で強く地面を押してバッター方向へに進めための反力を地面から受け取り、どれだけ加速できるかが球速アップのカギになります。
沈み込んだときに体を支えるために、ふくらはぎの筋肉とお尻にある筋肉の活動が高くなっています。
ふくらはぎとお尻の筋肉が弱いと重心の沈み込みで体がぐらついてしまい、体重移動の加速を十分に行うことができません。
ふくらはぎとお尻の筋肉はしっかりトレーニングするようにしましょう。
また、このフェーズで最大限加速するためには、お尻の外側にある中殿筋と内ももにある内転筋群の強化も必要不可欠になります。
ステップ足が着地してからリリースまで(フェーズ3)の下半身の筋肉の活動
次は左足が地面に着地してからリリースまでのフェーズです。
回転運動のタイミングになります。
ここから
ここまでです。
筋肉の活動は以下の通りです。
腓腹筋(ふくらはぎ) | 172% |
内側広筋(太もも前) | 138% |
大腿直筋(太もも前) | 49% |
大殿筋(お尻) | 141% |
大腿二頭筋(太もも裏) | 142% |
フェーズ1、フェーズ2と比べて全体的に筋肉の活動が高くなっているのがわかると思います。
しかし、太ももの前にある大腿直筋に関しては49%(フェーズ2でも38%)で低い数値になっています。
軸足では49%と低い数値である大腿直筋ですが、実は反対側のステップ足では167%も活動しています。
回転運動を安定して行うには、左足に体重をしっかり乗せて全身を回転する必要があり、その支えとして左足の大腿直筋は高い活動していますが、軸足に関しては筋肉の活動が低いようです。
むしろ、回転運動ではステップ幅を確保するために軸足を大きく後ろに引く必要があります。
もし、軸足の太もも前にある大腿直筋(赤楕円)が固くなっていたり、筋肉が過度に緊張しているとスムーズな体重移動を妨げる原因となるのでリラックスした状態を作ることが大切になります。
左足では太もも前側の大腿直筋の強化がとても大切だが、軸足の大腿直筋は体重移動の邪魔にならないようにガチガチに固めるのではなく、脱力させる必要がある
ピッチングでは下半身の筋肉が必要不可欠
今回、投球フォームの各フェーズで軸足の下半身筋肉がどのくらい活動しているかを研究データを参考に紹介しました。
ピッチング中の軸足の役割をざっくりいうと
- 体を安定して支えながら体重移動でできるかがり加速する
- 回転運動を高速で行うためのアシストを行う
になります。
ピッチング中に下半身の筋肉がどのくらい活動しているかを知ることで、ふだん行っているトレーニングが実際の投球フォームにどう生きてくるかをイメージしながら取り組むことができます。
普段からそのような意識を持ってトレーニングすることができと、トレーニング効果がより高まり、パフォーマンスアップにつながりやすくなります。
今回の記事を参考にしてトレーニングプログラムを組んでみてはいかがでしょうか。
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